農地保全でサンゴ礁を守るには? 陸と海はつながっている!
世界有数のサンゴ礁に迫る危機
沖縄県は、世界有数の希少で美しいサンゴ礁があることで知られています。しかし近年、沖縄のサンゴ礁は、陸地から海に流れ出る赤土などの影響で深刻なダメージを被っていることが報告されています。沖縄県では、1972年の本土復帰からサトウキビ畑などの農地開発が拡大していきました。沖縄県の土壌は約7割が赤土です。畑地の表土が雨などの侵食作用によって海に流出すると、海水が濁って、サンゴの体内にいる褐虫藻と呼ばれる植物プランクトンが光合成を行えなくなってしまいます。また、赤土で海水の富栄養化が進むことによって海藻が増えすぎ、サンゴの生育に悪影響が出てしまうのです。
赤土の流出を抑える「不耕起栽培」
畑地からの赤土の流出を抑制する農法として、最近注目を集めているのが「不耕起栽培」です。サトウキビの場合、収穫時に根元の部分を残しておくと、そこからまた新しくサトウキビを育てることができます。サトウキビではこの「株出し栽培」と呼ばれる手法を用いると、畑をむやみに耕さなくてもよくなるため、土壌侵食をくい止めることが可能になります。実験では、株出し栽培を実施したサトウキビ畑では、そうでない畑よりも表土の流出量を90パーセントも抑えられることがわかりました。
環境保全と経済活動のバランス
しかし、実際にすべての畑で不耕起栽培に転換してしまうと、病気や害虫、そして台風の被害などで収穫量が激減してしまう可能性も考えられます。何年かに一度は新しい苗を植えたり、ほかの作物との輪作を取り入れたり、別の農法を用いた畑と組み合わせたりなど、環境保全と経済活動のバランスを考えた施策が必要です。また、急斜面の畑地を緩やかにする工事や、赤土が海に流出する前に池で沈殿させる手法なども導入されています。こうした赤土流出を食い止めるためのノウハウは、沖縄だけでなく、パラオやフィリピンなど、同じく土壌侵食に悩む国々でも注目され、共同研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報
宇都宮大学 農学部 農業環境工学科 教授 大澤 和敏 先生
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