薬を創り、環境を守る―「フッ素化学」で社会に貢献!

薬を創り、環境を守る―「フッ素化学」で社会に貢献!

広く利用されるフッ素

フッ素は全元素の中でも特異な性質を持つ有用性の高い元素です。フッ素の特徴を活かして、より良い暮らしに貢献する「フッ素化合物」が利用されています。例えば、フライパンの表面加工や歯磨き粉、樹脂、エアコンや冷蔵庫の冷媒など、医薬品や農薬など、さまざまなものに使われています。

医薬品開発に役立てる

フッ素の特色の一つは、全元素中で電気陰性度がもっとも大きいこと、もう一つは原子の大きさが水素の次に小さいことです。医薬品は生体内のタンパク質に対して鍵と鍵穴のように結合して作用するため、大きさや形が重要です。フッ素はサイズが小さいため化合物に取り入れても大きさや形に影響を与えず、それでいて高い電気陰性度で化合物の性質を大きく変えられるのです。分子構造のどこにフッ素を入れれば効果的なのかを確かめるために、化学反応を用いてさまざまなフッ素化合物を合成して生物活性を合わせて評価します。最近研究が進んでいる新しいフッ素官能基の有用性についても調べられています。

フッ素化合物からのリサイクル

フッ素化合物は化学的に非常に安定である一方で、安定なことで自然界で分解されにくいことが問題になっています。フッ素樹脂の分解には約1000度の高温が必要であるため、ほとんどが埋め立てで廃棄されているのが現状です。フロンガスは温暖化の原因として製造や扱いに規制がかかっています。また、フッ素は蛍石から産生されるため、資源枯渇の問題があります。そこで、フッ素化合物を原料の蛍石に戻す方法が世界中で研究されていて、簡便かつ緩和な条件の開発が進められています。最近は、従来の有機化学的な手法に、別のエネルギーや装置を組み合わせた画期的な方法が開発されています。フッ素樹脂を分解して蛍石に戻すだけでなく、フッ素官能基などの形でフッ素を取り出す方法の開発も進められています。

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先生情報 / 大学情報

名古屋工業大学 工学部 生命・応用化学科 生命・物質化学分野 准教授 住井 裕司 先生

名古屋工業大学工学部 生命・応用化学科 生命・物質化学分野 准教授住井 裕司 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

フッ素化学、有機合成化学、創薬化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

有機化学に興味を持ってもらいたいです。有機化学は独立した学問のように見えて、実は生物や物理などさまざまな分野とつながっています。生物を構成している分子はほとんどが有機化学物質ですし、遺伝子の働きは化学のルールにのっとっています。構造式や化学式など覚えることがたくさんあって大変ではありますが、有機化学の理解は、有機化学物質で大部分が構成される自然界の現象の理解へとつながっています。そんな魅力や面白さを感じてほしいです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

名古屋工業大学に関心を持ったあなたは

名古屋工業大学は、世界のものづくりの中心地である中京地区の工学リーダーとして、技術イノベーションと産業振興を牽引するにふさわしい高度で充実した教育研究体制を整備しています。さらに国内の工科系大学のみならず、世界の工科系大学と連携することにより、工科大学の世界拠点として、異分野との融合による新たな科学技術を創成し、有為の人材を数多く世に送り出そうとする構想をもっています。