食品の成分が体に及ぼす作用のメカニズムを解明せよ
証明が難しい食品の健康効果
何気なく食べている食品が、健康に少なからず影響があることは、多くの人が実感しています。ところが、そのメカニズムについての科学的根拠(エビデンス)は、十分に解明されているわけではありません。
薬剤は、どのように人体に作用して治療効果があるのかについて、エビデンスが明確です。それに対して、食品の健康効果や病気予防の有効性は、エビデンスを明らかにすることが難しいのです。食品に含まれる成分は毎日少しずつしか取れませんし、作用が穏やかなので、影響が現れるまでに長い時間が必要だからです。
糖尿病の進行を抑制する食品
しかし、健康効果とそのメカニズムが解明されてきている食品成分もあります。例えば、キノコと糖尿病や高血圧などの生活習慣病との関係です。人間の体は、歳を取るにしたがって鉄のようにサビついてきます。人間の体のサビは、活性酸素による酸化ストレスによって進行します。糖尿病は、血液中の糖を取り込む細胞の膜がサビついて、十分に糖を取り込めなくなることで悪化します。高血圧も、血管の壁がサビてきて、弾力を失うことで進行します。このサビを抑える作用を、特定のキノコの菌糸体を培養した時の培地にある成分が持つことが、そのメカニズムとともに解明されてきています。
食品成分がDNAにも影響
脳梗塞(こうそく)やがんに対する食品成分の効果についても研究が進んでいます。中でも、食品がDNAの変化に作用し、がんに影響することがわかってきています。がん細胞の発生は、さまざまな要因でDNAが損傷することが原因の1つです。人間の体は、傷ついたDNAを絶えず修復していますが、修復の過程におけるタンパク質の発現パターンが、その人が食べているものに影響され、がんを発症しやすい人としにくい人の差につながっているというのです。そうであるなら、食生活のちょっとした工夫で、がんの予防につながるはずです。
このように、食品成分の解明は、人類の健康に大きく貢献することは間違いありません。
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城西大学 薬学部 医療栄養学科 教授 神内 伸也 先生
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