その薬、肌から吸収させる? させない?
肌に働きかける化粧品有効成分
化粧品は肌に塗ることで効果を期待します。ただし、肌の表面にある角層は強固なバリア能を持っているので、そのバリアを突破して有効成分を肌の中に届けなければなりません。そのためには、有効成分の肌への浸透を助ける作用をもつ成分の利用が必要となります。
浸透する仕組み、しない仕組み
化粧品有効成分を浸透しやすくするには、角層が有する生体膜構造に似せる小さな粒子を用いるというのがひとつの手段です。角層には、油と水の層が積み重なったラメラ構造があります。ラメラ構造を持つことで小さな粒子は、同じ様な構造をもつ角層になじみやすくなり、有効成分を肌の内部まで届けられるようになります。
一方で同じ肌に塗るものでも、日焼け止めのように、浸透させずに肌の表面にとどまらせたいものもあります。この場合は、日焼け止め成分が肌の表面で居心地がよくなるような材料を用います。そうすると、肌に塗ったとしても、居心地のより肌の上にとどまり、肌の中に浸透しません。このように化粧品の目的に応じて有効成分の動きをうまくコントロールすることで、化粧品有効成分の高い効果や安全性を確保しています。
未来の薬
肌への薬の投与は、誰にでも簡単にしやすいというメリットがあります。薬を口から飲むのが苦手な小児や高齢者にも向いていますし、医療従事者や介護者が代わりに投与することもできます。また、花粉症による目のかゆみの治療には、点眼薬が用いられていますが、夜寝るときに下まぶたに薬を塗るだけで、花粉症による目のかゆみをおさえることができる研究も進んでいます。下まぶたから薬が持続的に目に届くため、1日中点眼をしなくても薬が効き続けるというものです。
将来的には時計型のウェアラブル装置との連動も考えられます。例えば、痛みを感じない微小な針をモバイル型ポンプ装置と組み合わせると、体の情報をモニタリングしながら必要なときだけ薬を投与するようになるでしょう。肌からの薬の投与はさまざまな可能性を秘めているのです。
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城西大学 薬学部 薬科学科 教授 藤堂 浩明 先生
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