生物だけでなく、人間にとっても有用な「香り」
生物にとって香りの重要な役割
自然界には、植物や昆虫、動物といった生物が発しているさまざまな香りがあります。これらの香りは、生物が生きる上で重要な役割を果たしています。例えば、集団で行動するアリは自分やほかのアリが発するフェロモンの香りを道標として、巣穴からえさ場まで間違いなく移動します。フェロモンがなければ、集団行動ができません。また、植物は昆虫など外敵によって傷つけられると、匂い成分を出して菌から自分の身を守ります。匂い成分が、菌の感染が広がらないように「消毒」の役割を果たすのです。
医療や食品、健康産業に利用される香り
植物の匂い成分には「フィトンチッド」と呼ばれている殺菌作用の成分がありますが、濃度が低いと人間にとっては安らぎを与えリラックスさせてくれるよい香りもあります。このように生物の香りには、本来の役割と違って、別の機能を持たせることもできます。よって、森林浴やアロマテラピーに利用されています。医療現場では、手術前の患者の不安を除去したり、手術後にうつ状態になった患者を癒やしたりといった効果もあります。このほか、香りには味を強化する役割があります。加工食品の成分表を見ると、「香料」という文字を見ることがあると思います。香料は、食品に新しい風味を加えたり、高級感を与えたりするなど付加価値を持たせる機能があります。
香りを分析して、化学合成の方法を探る
食品などで香りを利用するには、天然物だけでは足りません。同じ香り成分を大量に生産する必要があります。そのため、天然の香り成分を分析して、香りの原因となる物質を抽出して、それがどのような化学構造を持っているかを解析します。さらに、それを人工的に化学合成する方法を見つけ出します。香りは、新しい商品を開発したり、産業分野を開拓したりするという点でも貢献しているのです。
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