おいしいとは何か~「おいしさ」を表す官能評価~
人の感覚で「おいしさ」を調べる
何かを食べておいしいと感じた時に、どうしておいしく感じるのか考えたことがありますか? 「おいしさ」には、食品と食べる人のそれぞれに要因があります。物理的・化学的な特徴である軟らかさや甘さなどは、誰が食べても変わらない食品側の要因です。一方、人による要因とは、おなかが空いているかいないか、好きか嫌いかなどが含まれ、人によって変わるものです。このような、食品側の要因とおいしさの関係を人の持つ感覚(5感)を使って調査することを「官能評価」と呼びます。
おいしさを表す基本の味
食品側の物理的な要因の主なものは食感です。口に入れた時のなめらかさ、かんだ時のシャキシャキ感、飲み込む時ののど越しなどが挙げられます。また、化学的な要因は食品の味です。甘み、酸味、塩味、苦み、うま味の5つが基本で、味覚神経を刺激するものです。さらに、辛みや渋みといった痛覚神経の刺激もおいしさに関係します。加えて、香りもおいしさの大切な要素です。味と香りには相互作用があり、食べる前に嗅いだ香りが味として感じられたり、かんでいるうちに口の中の味が香りとして感じられたりします。官能評価では、それぞれの食品の物理的・化学的な特性を数値として分析したうえで、数人が同じ条件で一斉に同じものを食べて、分析項目の相関からおいしさを判断します。
おいしい数値を利用する
牛肉の官能評価をすると、おいしさと脂肪含量の相関グラフは二次曲線のような形を描くことがわかっています。脂肪含量が増えるほどおいしさを感じますが、生肉の脂肪が36%前後でピークとなり、その後は減少していきます。このように、おいしさを具体的な数値で測ることで、例えば脂肪含量が多すぎる肉の場合、脂を落とすような調理法によって理想的な脂肪含量に近づければ、おいしいと感じられる料理として提供できます。官能評価により、おいしいという人の感覚を具体的な数値で示すことで、さまざまな食材のより良い活用につながっていくのです。
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日本女子大学 家政学部 食物学科 教授 飯田 文子 先生
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