講義No.11646 食物・栄養学

おいしいとは何か~「おいしさ」を表す官能評価~

おいしいとは何か~「おいしさ」を表す官能評価~

人の感覚で「おいしさ」を調べる

何かを食べておいしいと感じた時に、どうしておいしく感じるのか考えたことがありますか? 「おいしさ」には、食品と食べる人のそれぞれに要因があります。物理的・化学的な特徴である軟らかさや甘さなどは、誰が食べても変わらない食品側の要因です。一方、人による要因とは、おなかが空いているかいないか、好きか嫌いかなどが含まれ、人によって変わるものです。このような、食品側の要因とおいしさの関係を人の持つ感覚(5感)を使って調査することを「官能評価」と呼びます。

おいしさを表す基本の味

食品側の物理的な要因の主なものは食感です。口に入れた時のなめらかさ、かんだ時のシャキシャキ感、飲み込む時ののど越しなどが挙げられます。また、化学的な要因は食品の味です。甘み、酸味、塩味、苦み、うま味の5つが基本で、味覚神経を刺激するものです。さらに、辛みや渋みといった痛覚神経の刺激もおいしさに関係します。加えて、香りもおいしさの大切な要素です。味と香りには相互作用があり、食べる前に嗅いだ香りが味として感じられたり、かんでいるうちに口の中の味が香りとして感じられたりします。官能評価では、それぞれの食品の物理的・化学的な特性を数値として分析したうえで、数人が同じ条件で一斉に同じものを食べて、分析項目の相関からおいしさを判断します。

おいしい数値を利用する

牛肉の官能評価をすると、おいしさと脂肪含量の相関グラフは二次曲線のような形を描くことがわかっています。脂肪含量が増えるほどおいしさを感じますが、生肉の脂肪が36%前後でピークとなり、その後は減少していきます。このように、おいしさを具体的な数値で測ることで、例えば脂肪含量が多すぎる肉の場合、脂を落とすような調理法によって理想的な脂肪含量に近づければ、おいしいと感じられる料理として提供できます。官能評価により、おいしいという人の感覚を具体的な数値で示すことで、さまざまな食材のより良い活用につながっていくのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

日本女子大学 家政学部 食物学科 教授 飯田 文子 先生

日本女子大学 家政学部 食物学科 教授 飯田 文子 先生

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家政学、調理学、食品学、栄養学

先生が目指すSDGs

メッセージ

会話をしながら、テレビを見ながら食べるのではなく、時には料理や食品に注意をむけて真剣に食べてみてください。味と香りと食感を意識してみると面白いですよ。
近い未来、栄養だけを考えればサプリメントや栄養強化食品だけを摂取する時代が来るかもしれません。しかし、食べることはエネルギー補給のみでなく「おいしさ」は人生の彩りでもあります。どんなふうにおいしいかを知ることは、どうしたらおいしい食品を作れるか、また調理したいかがわかってきます。食事の楽しさや幸せを知って、食べ物を大切にすることはSDGsにも繋がります。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

日本女子大学に関心を持ったあなたは

日本女子大学は、「日本で最初の日本を代表する女子大学」という意を込められて名付けられました。創立は1901(明治34)年、110余年の歴史をもつ伝統ある女子総合大学です。創立以来「自らの人格を高め、使命を見いだして前進する」という理念のもと、社会で力を発揮できる思考力・実践力を育てることに力を注いできました。女性の生き方の選択肢がますます多様化する今の時代、可能性は無限に広がっています。日本女子大学は、自分の個性や資質を再発見し、あなたらしく輝くための生き方を存分に追求できる大学です。