障がいがある子どもの能力を引き出す、教育現場の作業療法士
障がいのある子どもの支援
作業療法士というと、高齢者や肉体的な障がいのある人に対して、病院や施設で生活支援やリハビリを行う人と思っている人も多いかもしれません。しかし、発達障がいや知的障がいの子どもたちを支援するのも、作業療法士の仕事です。このような障がいのある子どもたちは、特別支援学校や通常の学校に通っているので、医療の一部というより教育分野の仕事ですが、今はまだ教育機関で働く作業療法士は少なく、養成段階で障がいがある子どもに関わる実習の機会も少なく、就職先も多くはありません。
集団教育が基本の学校で個別に対応
障がいのある子どもたちは、人によって症状が違うので個別に対応すべきですが、学校は集団教育が基本のため、なかなか一人ひとりに対応できないのが現状です。そのため授業についていけず、落ち着きがなくなり授業中に教室を歩きまわったり、友だちと話したりといった問題行動が出てしまいます。しかし、ただ注意するだけでは改善にはつながりません。そこで環境を変え、目的とする課題を工夫することが求められるのです。それを担当するのが、作業療法士です。学校の先生と協力して、専門家としての観察・評価を行い、改善のための個別プログラムを作るのです。
環境を変えて能力を引き出す
絵を描くことは好きなのに、絵の課題が上手にできない子どもがいました。なぜなのかを観察してみると、絵を描くための道具が教室のいろいろな場所にあり、複数の場所へ移動しなければならないことが原因だとわかりました。そこで、道具にラベルを貼り、同じ場所に置くようにすると、自分で必要な道具を集められるようになりました。また、その子は課題を難しいと感じていたため、どこを難しいのかを考え、塗り絵の線を太くしたところ、描けるようになったのです。そして自信を得て、ほかの友だちのお世話までするようになりました。環境や課題を変えることで子どもの能力を引き出すことができます。教育の場で、作業療法士の活躍が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 作業療法学コース 教授 古山 千佳子 先生
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