腸内環境と食事の関係 調査方法の標準化が開く新たな扉
注目される腸活
「腸活」とは、腸内環境を整えて健康を維持・改善する活動のことです。腸活が注目されるようになった背景には、腸内細菌の多様性と健康状態との関係や、「腸脳相関」といった科学的な発見があります。メディアやSNSでは、腸活をテーマに「こういう栄養素を取るのがよく、それにはこの食材が適している」といった情報があふれています。
食事調査手法の問題点
実は、「摂取食品・栄養素と腸内細菌叢の関係」に関する疫学研究では、食物が腸内細菌叢に与える影響は、生活習慣や性別、薬の摂取などを含めた影響全体のうち、0.1~10%に過ぎない可能性がある、とも報告されています。しかし、これらの研究結果から、食物の影響は小さいと結論づけるのは早計です。その理由は、摂取食品・栄養素量の調査手法にあります。食事内容が容易にコントロールできる動物実験と異なり、ヒトを対象とした研究では長期間に渡る食事内容を把握するためには調査票を用いた調査に頼らざるを得ません。従来の研究では食事調査の精度が粗い上に、個別の食品や栄養素の評価に偏重してしまい、食事全体のバランスや食事パターンの評価が不足していました。また調査手法が標準化されていないために、研究結果の比較が難しいという問題点もあります。
食事調査手法の標準化と最適化をめざして
そこで「調査手法の標準化と最適化」をめざして、学生を対象にした詳細な食事調査と腸内細菌叢解析が行われています。複数の調査手法を用いて、季節ごとに食事内容を記録し、腸内細菌の変化と食事内容の関連性を分析して、どの食事調査方法が最も腸内細菌の変化をとらえることができるかを検証するのです。
このような取り組みにより、調査方法が標準化・最適化されれば、世界中の研究データを統合して分析することがより容易になります。また疾患を有する人と健康な人の腸内細菌叢を比較することで、疾患の状態に合わせた最適な食事療法の開発などにつながることも期待されます。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 地域創生学部 地域創生学科 健康科学コース 准教授 岡田 玄也 先生
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先生への質問
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