土砂災害を防げ! ~不飽和土の分析による地盤の安全性評価~
豪雨による土砂災害
豪雨が起こると、土砂崩れや土石流など、地盤に関する災害の恐れがあります。急傾斜地や裏山がある場所では、たびたび避難が呼びかけられますが、危険度が明確にわからないために実際の避難には至らないケースもあります。また現在、自治体により作られている土砂災害のハザードマップは主に地形的な急傾斜地を示すものが多く、地盤の状態までは考慮していません。そのため、過去の災害ではハザードマップで危険地域とされていない場所で、火山灰の土が水を含んだことによる斜面崩壊が起きた例もありました。地中深くまで掘り下げて土のサンプルをとれば詳しい地盤の状況がわかりますが費用が高く、すべての地域をくまなく調査することは不可能です。そこで、地表面近くの土だけで地盤の強度を評価することを目標に、研究が進められています。
水は土の接着剤
今まで地盤工学では土を、まったく水分を含まない「サラサラのもの」と、海の下にある土のような十分に水を含んだ「飽和土」の2種類に分けて考えていました。しかし、地球上にあるほとんどの土はその中間、適度に湿り気を含んだ「不飽和土」です。最近ようやくこの不飽和土の重要性が認識されてきました。
土の中の水に働く表面張力が接着剤のような役割をして、土の粒と粒とをくっつけています。つまり、適度な水は土に一定の強度をもたらしているのです。しかし、さらに水を加えると表面張力はなくなり、強度は落ちていきます。土の種類によるこうした強度の特性が把握できれば、より詳しい地盤の評価につながります。
地盤品質判定士
東日本大震災の後に、一般市民からの地盤に関する相談窓口として「地盤品質判定士」という資格が創設されました。被災した家屋の建て替えや補修の際に、費用や工事方法が適正かどうかの判断を仰ぐ専門家を必要としたためです。現在は全国で約1500人が登録し、一般市民からの宅地などの地盤についての相談を受けています。また、自治体のハザードマップ作成や災害復旧への協力なども行い、幅広く活躍しています。
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先生情報 / 大学情報
前橋工科大学 工学部 建築・都市・環境工学群 准教授 森 友宏 先生
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