不純物を除去して生かす! 金属材料の資源循環
金属産業の要は不純物の除去
日本の金属産業は、高品質あるいは特殊な材料を作る技術に長けており、世界で優位性を保っています。日本は鉱物資源が乏しく、金以外の金属原料は100%輸入に頼らざるを得ません。持続可能な社会の実現のためにも、一度製品として使われた金属の再利用が進められています。しかし、例えば鉄では再利用原料が占める割合は25%に留まっています。その要因の一つは、リサイクル資源から取り出した鉄にはさまざまな不純物が混ざっており、産業的に成立する方法で除去するのが難しいことです。また、鉄鉱石から鉄製品を作る場合にも不純物を除去することが必要です。近年は鉄鉱石の品質低下が顕著になってきており、不純物除去の重要性が増しています。
不純物除去の限界を見極める
金属中の不純物の多くは酸化させて除去しますが、その酸素が不純物として残ってしまいます。そこで、その金属よりも酸素と結合しやすいものを入れて酸化物を作り、それを除去する脱酸のプロセスを踏みます。産業的には、何をどれくらい入れたら、どこまで除去できるかが正確に予測できることが大切です。鉄といくつかの合金については、実験と理論の両面から予測モデルが作られ、何%まで除去できるかの限界も明らかにされています。どうしても残ってしまうものについては、それが金属材料内で悪影響を及ぼさないようにする工夫も研究されています。
邪魔ものをよそで生かす
不純物として除去されるものの中には、資源として役立つものもあります。例えば、鉄のリサイクル資源には銅やリンが含まれており、鉄の精製においては不純物ですが、いずれも貴重な資源です。除去したものを廃棄してしまうのではなく、活用する方法や、その仕組みの構築も重要な研究テーマです。
また現状では、金属産業はCO₂を大量に排出しており、環境負荷が大きいです。CO₂の削減と副産物の活用の両面から研究を進めていくことが、金属産業の未来を照らし、持続可能な世界の実現につながるのです。
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