やりたいことが仕事と結びつかない人はダメなのか?
感情を「管理」する
あなたは生活の中で周囲の空気を読み、「本当は別に楽しくないけど、とりあえず笑っておこう」と感情をコントロールすることがあるでしょう。このように「感情を管理する」能力は、仕事・職場でも強く求められます。例えばクレーマーのような顧客を相手にする場合、店員は内心不快に思っていてもそれを顔を出さずに対応します。上司や部下の言動に違和感や苛立ちを覚えても、それをそのままぶつけることはせず、相手の体面や気持ちを傷つけないようなオブラートに包んだ表現をします。
「やりたいこと」問題
こうした傾向は20世紀に入り、世の中が消費社会へと進むにつれて顕在化してきました。徐々に仕事と人々の感情のありようが切り離せなくなってきたのです。感情とは個人的・内発的なものと考える人も多いと思いますが、社会的なものでもあります。
高校生や大学生の多くは「就活」を経験しますが、面接などでは「あなたのやりたいことはなんですか?」と質問されます。ここで「単純でラクな仕事」「仕事よりも趣味を充実させたい」などと答えるのはご法度とされています。その仕事をすることがいかに自分の喜びであるのかをアピールしなければ、採用は難しいでしょう。顧客や同僚ともうまくやっていく力があることもあわせてアピールしなければなりません。
現代社会の「生きづらさ」を読み解く
若者が「やりたいこと」を探したり、大人がそれを支援することは間違いではありません。しかし多くの学生にとって「働くこと」は未知の領域であり、「やりたいこと」と仕事が結びつかないこともあるでしょう。「やりたいこと」を明確にできないことで悩んだり、自分にはコミュニケーション力がないように感じて落ち込む若者も多くいます。
社会学は、そうした悩みが、個人の資質というよりも社会の仕組みや制度によってもたらされると考えます。現代社会の「生きづらさ」が、どのように生みだされていくのかを読み解く社会学の視点や研究は、自分の人生を切り開くことにも役立ちます。
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