知的財産権が期間限定なのはなぜ? 所有権との違いは?
情報を守る知的財産法
知的財産法では財産的に価値がある情報を作りだした者に権利を与え、利益などが侵害されないように保護しています。発明品に対する特許、本の著作権などさまざまな権利がありますが、保護期間は限定的です。一方で物の権利を保障する所有権には期限がありません。なぜ知的財産権は永久的ではないのでしょうか?
広まってこそ価値を持つ情報
物は物理的な支配や独占が可能ですが、情報は完全な支配が不可能です。例えばある情報を他人に伝えた場合、発信者の手元にも情報が残るので、同じ内容を共有することになります。そのため情報は公共財として扱われ、自由・共有が原則です。情報を最初に作った人が我慢すれば多くの人が便利さを得ることができますが、開発には多くの時間や費用がかかります。この苦労が報われない場合、作者が情報を開示しなくなる恐れがあります。もし一部の富裕層が作者を囲い込むなど情報を独占する状況が生まれると、社会は大きな損害を被ります。そこで作者に情報のコントロール権を与え、一定期間利益を与えることにしました。権利を認める代わりに価値のある情報を世の中に広めることが知的財産法の基本構造です。
限定的な保護で発展をうながす
もし知的財産権を永久的なものにすると、かえって産業や文化などの進歩・発展を妨げます。例えば電球を発明したエジソンに永久的な特許権を認めると、現代でも電球を作るたびにエジソンに許可を取らなければなりません。古くなった技術を誰かのものにするのはナンセンスです。そのため保護期間は限定的にし、その後はパブリックドメイン(保護期間を経過した公共財産)にしたほうが発明は生かされます。
歴史的に見ると、一時的でも利益や権利を認めると発明の速度が上がっています。知的財産権は作者にやる気を起こさせるインセンティブとして機能するのです。所有権の目的は物と所有者を守ることですが、知的財産権の目的は一時的な独占をニンジンにはしますが、期間経過後は情報を公共財として広め、産業や文化を進歩・発展させることなのです。
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先生情報 / 大学情報
駿河台大学 法学部 法律学科 准教授 松平 光徳 先生
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