再犯のリスクを減らしていくために
犯罪心理学で取り組むこと
「犯罪心理学」と聞くと、加害者の心理を読み解いて犯人捜しをするなどの「プロファイリング」が頭に浮かぶかもしれません。実際はそれだけではなく、加害者が再び犯罪をしないようにするための矯正や、無実の罪で捕まった人がなぜ自白してしまうのかなどを調べる心理分析など、犯罪と刑事事件に関わる心理を幅広く研究する学問です。犯罪捜査はもちろん重要ですが、犯罪者を矯正し、再犯をしないようにするための研究も犯罪心理学の中で進められているのです。
さまざまな要因による再犯
再犯は、本人の心理的な問題だけではなく、家庭環境や経済状況など多くの要因が重なる形で起こります。研究においては、統計的手法を活用しながら、再犯リスクとなる要因を分析します。一方、個々の犯罪者や非行少年に対しては、それぞれどのような再犯リスクがあるのかを分析し、再犯を未然に防ぐための手法を検討します。
例えば、万引きを繰り返す人で、早い時期から家のお金を持ち出しているようなケースでは、保護者の愛情を感じられず、関心を引きたいという場合が少なくありません。この場合、保護者との関係を変えていくことが再犯リスクを減らす手段の一つと考えられます。しかし、その後、万引きがスリルや達成感を味わうためのものとなり、依存性が出てくると、その行動を止めるために認知行動療法などのプログラムを使用する必要も出てきます。これは、アルコールや薬物への依存の治療などに使われるプログラムを応用したものです。
新たな被害者を生まないために
犯罪を起こした人に対して手厚く対応することに対して、疑問視する声もあります。犯罪被害者の人に対する支援を充実させることも重要なことです。ただし、社会が犯罪者を排除すればするほど、犯罪は繰り返され、その結果、新たな被害者が増えることになります。そうした悪循環を断ち切るためにも、再犯要因の研究と、再犯リスクを減らすための手法やプログラムの充実が求められています。
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先生情報 / 大学情報
駿河台大学 心理学部 心理学科 教授 古曵 牧人 先生
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