講義No.08961 法学

刑法解釈を体験してみよう ~偽証罪に問われる「ウソ」とは?~

刑法解釈を体験してみよう ~偽証罪に問われる「ウソ」とは?~

法律の解釈には幅がある!?

法律には憲法、民法、商法、刑法などがあり、私たちが社会生活を円滑に送れるように機能しています。法律の中で犯罪の成立要件や刑罰に関して規定しているものが「刑法」です。裁判官は刑法に則り、判例、すなわちこれまでの法律的判断を考慮して、判決を言い渡します。
こうした判決の過程には、わずかな「揺るぎ」もないように思えます。しかし、実際には1つひとつの事件は、微妙に違っていますし、時代や国民感情によって刑法の解釈には幅が生まれます。1つの事案に、正反対の解釈が成り立つことさえあるのです。

「偽証罪」の2つの解釈

例えば、「偽証罪」は「うその証言をすると罪になる」という法律です。では、「うそ」とはなんでしょうか。ある証人が、Aが逃げていくのを記憶していたのに、裁判では「逃げたのはB」と証言し、実際に逃げたのはAではなくBであることが明らかになったとしましょう。この場合、証人は偽証罪に問われるのでしょうか。現在の裁判では、「記憶通りに述べることが証人の役割」とされることが多く、この証人は偽証罪に問われる可能性があります。
しかし、これに異を唱える解釈もあります。「偽証罪は、裁判所の判断を誤らせないためのものであり、記憶と違う証言をしたとしても、裁判所の判断を誤らせていない証言を偽証とは言えない」という見解です。同じ「偽証罪」という法律でも、正反対の解釈が成り立つのです。

国民にとってよりよい解釈を

このように、法律には解釈の余地があります。言葉の意味する内容が、時代によって少しずつ変わってくることも珍しくありません。刑法の研究では、どのような解釈がよりふさわしく、より妥当であるのかを考察することが、課題の1つです。特に刑法は、人間の自由や、時には生命を制限したり奪ったりするものですから、影響は甚大です。
国民が社会生活を安定的に送るためには、どんな解釈がよりよいのかを常に研究し、社会に提示していくことが、刑法の研究には求められているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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駿河台大学 法学部 法律学科 教授 長谷川 裕寿 先生

駿河台大学 法学部 法律学科 教授 長谷川 裕寿 先生

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メッセージ

私は刑法を研究しています。「法律を学ぶ」というと「六法全書」を覚えなければいけないと思っている人がいますが、それは違います。「六法全書」は国語辞典や英和辞典のようなもので、困ったときに立ち返るものなのです。
法律学を学ぶメリットはいろいろありますが、その1つは「論理的に考える頭を作る」ことです。相手に納得してもらえるように、論理を積み上げることが法律学の方法だからです。これは社会人としても大切な力ですから、ぜひ法律学を学んで身につけてほしいと思います。

先生への質問

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駿河台大学に関心を持ったあなたは

駿河台大学は、緑豊かな美しい自然環境に恵まれた飯能にキャンパスを持つ、人文・社会科学系の総合大学です。「ひとりひとりの夢とその歩みを支援し、自立を促す教育」を行い、学生と教員が討論を重ねる少人数制のゼミ教育を重視。資格取得はもちろん、実社会で役立つ、コミュニケーション能力・プレゼンテーション能力などを培います。一生の仲間をつくり、将来に役立つ体験に挑戦するキャンパスライフを応援しています。5学部15コース分野で、法律・経済経営・メディア・観光・スポーツ・心理などを専門的に学べます。