図形が持つ深い性質を探る「トポロジー」の世界
形も大きさも不問にする幾何学の一分野
中学校の数学の授業で、「合同」や「相似」といった幾何学の勉強をしましたね。形も大きさも同じ2つの図形を「合同」、形は同じだけれど大きさは同じでなくてもよい2つの図形を「相似」と言います。さらに、形も大きさも同じでなくてもよいとする幾何学に「トポロジー」があります。例えば、針金で作った三角形があるとします。3つの角をゆるめると、円になります。サイコロのような立方体(正六面体)の箱も角をゆるめていくとビーチボールのような球面になります。このような、三角形と円、サイコロとボールは同じ「位相」にあると言います。これがトポロジーの基本的な考え方です。
図形の深い性質を探究する
なぜ、図形を扱うのに形も大きさも不問にするのでしょうか? トポロジーが、図形が持つ深い性質を探究するためです。見た目には全然ちがう図形であっても、性質としては同じととらえることができたり、見た目では似ていても図形の性質としてはまったくちがうことに気づくことができるのです。例えば、ビーチボールと菓子箱(六面体の箱)はまったくちがう形ですが、トポロジーでは同じ性質を持っているととらえます。一方、ビーチボールと浮き輪はどうでしょう? ビーチボールの球面をどんなに引っ張ってもつぶしても、浮き輪のようなドーナツ面にはできません。この2つはトポロジーではちがう性質の図形なのです。
見ることができないものの形を解明する
見た目だけではわからない、図形の深い性質を探究することは、ものの見方を広げることにつながります。それは、人間が見ることができないもの、例えば宇宙などが、どんな形をしているのかを解明する基礎にもなるのです。宇宙を、宇宙の外から見た人はいません。見たことのないものの形を解明するためには、図形に対する深い洞察が不可欠です。トポロジーとは、人類の知の拡大の一環をなす、とても重要で興味深い学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
東京女子大学 現代教養学部 数理科学科 数学専攻 教授 新國 亮 先生
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数学、幾何学、トポロジー(位相幾何学)先生への質問
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