トポロジー(位相幾何学)の世界
トポロジーとは
トポロジー(位相幾何学)とは幾何学の比較的新しい分野です。あなたは、ドーナツとマグカップとを同じ図形とみなす考え方を耳にしたことがあるかもしれません。ドーナツ、つまり円環の形状のものを連続的に変形していくと、マグカップにすることができます。「数」の概念は、例えば2個のリンゴと2個のオレンジから取り出した「2」という共通性が出発点でした。トポロジーが扱う「位相空間」という概念は、このような連続変形から取り出される「円環の形状」という共通性が出発点です。トポロジーでは、4次元、5次元、さらに無限次元の図形など、一見非現実的に思われるかもしれない対象も扱われます。
3種類のケーキを2人で均等に分けるには……
トポロジーは、数学の諸分野で「数」と同様に、当たり前の手段として利用され、今では不可欠な道具です。トポロジーを活用すると、一見、複雑で手が出そうにもない問題を解決に導けることがあります。
例えば、チョコレート、ストロベリークリーム、バニラクリームの3種類の部分がいくつも不規則につながった、1本の細長いケーキがあり、このケーキを縦に何カ所か切って2人で分けたいとします。3種類の部分を同時に均等に分けるためには、ケーキを何カ所切れば可能かという問題を考えます。答えは「3カ所以内で可能」となります。もし3種類でなく10種類から成るケーキのときは、10カ所以内です。これらの答えを得るには、「高次元球面」の理論である「ボルスク・ウラムの定理」を利用します。
高次元の図形が見えてくる
ケーキのうまい配分の仕方を具体的に探す以前に、そもそもうまい配分の仕方が「存在」するかどうか知りたいとき、トポロジーが有効なのです。可能な配分方法のすべてを「図示」するのがアイデアです。すると10種類なら9次元球面という高次元図形によって「図示」されるとわかるのです。
物理学、経済学などでも可能なすべての配置が高次元の図形になることはしばしばあります。トポロジーはそのような場面で威力を発揮します。
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