講義No.04443 数学 物理学

トポロジー(位相幾何学)の世界

トポロジー(位相幾何学)の世界

トポロジーとは

トポロジー(位相幾何学)とは幾何学の比較的新しい分野です。あなたは、ドーナツとマグカップとを同じ図形とみなす考え方を耳にしたことがあるかもしれません。ドーナツ、つまり円環の形状のものを連続的に変形していくと、マグカップにすることができます。「数」の概念は、例えば2個のリンゴと2個のオレンジから取り出した「2」という共通性が出発点でした。トポロジーが扱う「位相空間」という概念は、このような連続変形から取り出される「円環の形状」という共通性が出発点です。トポロジーでは、4次元、5次元、さらに無限次元の図形など、一見非現実的に思われるかもしれない対象も扱われます。

3種類のケーキを2人で均等に分けるには……

トポロジーは、数学の諸分野で「数」と同様に、当たり前の手段として利用され、今では不可欠な道具です。トポロジーを活用すると、一見、複雑で手が出そうにもない問題を解決に導けることがあります。
例えば、チョコレート、ストロベリークリーム、バニラクリームの3種類の部分がいくつも不規則につながった、1本の細長いケーキがあり、このケーキを縦に何カ所か切って2人で分けたいとします。3種類の部分を同時に均等に分けるためには、ケーキを何カ所切れば可能かという問題を考えます。答えは「3カ所以内で可能」となります。もし3種類でなく10種類から成るケーキのときは、10カ所以内です。これらの答えを得るには、「高次元球面」の理論である「ボルスク・ウラムの定理」を利用します。

高次元の図形が見えてくる

ケーキのうまい配分の仕方を具体的に探す以前に、そもそもうまい配分の仕方が「存在」するかどうか知りたいとき、トポロジーが有効なのです。可能な配分方法のすべてを「図示」するのがアイデアです。すると10種類なら9次元球面という高次元図形によって「図示」されるとわかるのです。
物理学、経済学などでも可能なすべての配置が高次元の図形になることはしばしばあります。トポロジーはそのような場面で威力を発揮します。

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東京大学 大学院数理科学研究科  教授 古田 幹雄 先生

東京大学 大学院数理科学研究科 教授 古田 幹雄 先生

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メッセージ

よく「受験対策をする」などと表現されることがあります。しかし私は、人間が勉強でも仕事でも自分の人生に深く関わる何かに取り組むということは、「対策」という言葉では到底届かない「重み」があると思うのです。野球少年にとって野球が単なる遊びではなく、ある濃さと重みをもって、どうしようもなく関わりを持つものとして存在する感覚と似ています。あなたも勉強に対して、それが大学へ入るための受験勉強であっても、「対策」とは全く違う奥行きをもった重みのある関わり方がきっとできるはずです。

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。