講義No.13979 数学

GPSにも欠かせない「曲がった空間」の幾何学

GPSにも欠かせない「曲がった空間」の幾何学

現代の技術で重要な役割を果たす「曲がった空間」

私たちが生活している世界は直線が最短線の、平坦な「曲がっていない空間」ですが、実はそれだけが私たちにとっての「空間」ではありません。例えば、宇宙(時空)は「曲がった空間」として扱う必要があります。「曲がった空間(=多様体)」の幾何学は、平坦な空間だけではなく、空間の曲がり具合を考える数学の一分野です。曲がった空間の特徴を明らかにするために用いられる道具の一つが「多様体上の非線形偏微分方程式」で、数学の分野だけでなく、相対性理論におけるアインシュタイン方程式など広い分野で研究されています。

日常で役立つ曲がった空間の幾何学?

曲がった空間の幾何学は日常でも役立っています。例えば、アインシュタインの一般相対性理論によると、GPS衛星が周回しているところの時計と地球上の時計では、それぞれに対する地球の重力(時空のゆがみ)による影響の大きさが異なるため、時間の進み方にずれがでてしまい、そのままでは正しい位置情報が得られません。そのずれを修正する計算をするためにも曲がった空間の幾何学は生かされています。スマホ片手に見知らぬ街を探索できるのも、曲がった空間の幾何学のおかげであり、私たちの生活にも役に立っているのです。

見えない世界が広がる数学の面白さ

数学の面白さは無限を扱ったりn次元の空間を考えたりと、日常生活で出会わないことに出会える楽しさがあります。例えば私たちは時間を含めた4次元の時空で生活していますが、超弦理論では時空は10次元と考えられています。数学は、こうした目に見えないものを明らかにしようとしています。ユークリッドが平面幾何学を定義してから、2000年以上もそれが数学の基本とされていました。19世紀に曲がった空間の考え方が発見されて以来、曲がった空間の幾何学は多くの数学者によって研究されています。微分や積分を用いて物理現象を研究する「解析学」も含めて多様な側面から証明に挑むことで、数学の新しい世界は開かれるのです。

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先生情報 / 大学情報

椙山女学園大学 教育学部 子ども発達学科 講師 川村 昌也 先生

椙山女学園大学 教育学部 子ども発達学科 講師 川村 昌也 先生

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幾何解析、大域解析学

メッセージ

受験の絡みもあって、高校までの数学は計算が上手にできるか、公式を用いて問題が解けるかといった側面しか見ない傾向がありますが、大学では全く違います。現実に何が存在していて、それを証明するにはどんな構造が可能か、それが成り立つのはなぜかといった論理が中心です。哲学に近いといえるほどで、理論的な思考力が重要です。「曲がった空間」の探究は、宇宙が研究対象に含まれるスケールの大きい分野です。この研究は非常に奥深く、世界の見え方がまるで変わるくらいです。興味があればぜひ一緒に探究しましょう。

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