生活から生まれたダンスの変遷

生活から生まれたダンスの変遷

アマゾンの裸族に見るダンスの源流

「ダンスとは何か」を理解するのにとてもよい例があります。それはアマゾンで狩猟生活をしている人々のダンスです。男性たちは何日か狩猟に出て、獲物を捕って帰ってくると、広場でその喜びをダンスで表現します。女性たちはそれを見て涙を流して喜ぶのです。男性たちのダンスには赤ちゃんや子どもも参加します。また、女性たちはその横で獲物を料理します。つまり、獲物が捕れてうれしいという高揚した気持ち、また狩りの様子をダンスで伝えて、それを待っていた人々と共有するのです。ダンスを通して、その村の一員だという気持ちが高まります。ダンスのリズムの繰り返しが一体感を生むのです。

ダンスが専門化する過程

このように、ダンスは生活に密着した感情の表現であり、コミュニケーション手段でもありました。それは言語が成立する前からありましたが、その後言語などいろいろなコミュニケーション手段ができてきて、感情をダンスに託すことはなくなりました。しかし、共に踊る楽しさと一体感が得られる喜びから人は踊り続け、今も残っているのがフォークダンスや民踊です。
こうした誰もが踊るダンスから、やがてダンスのうまい人が出てきます。その人たちがダンスの専門家になり、洗練され、高い技法を持った形式を生み出していきます。そして西洋では宮廷舞踊からバレエへ、日本では猿楽や田楽から能、狂言、歌舞伎へと発展していきました。

モダンダンス、コンテンポラリーダンスへ

20世紀に入るとクラシックバレエに対する疑問が起こり、モダンダンスが生まれました。これは不安や嫉妬など人間の醜い面もかくさず表現するダンスです。さらにポストモダンダンスや舞踏、90年代にはコンテンポラリーダンスが出てきました。ヒップホップなどのストリート系ダンスも盛んです。
今、私たちの周りにはこれらのさまざまなダンスがすべてあり、ダンスの時代と言われています。これからまたどんなダンスが新しく生まれてくるのか。自由な身体表現であるダンスの可能性はまだまだあるのです。

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先生情報 / 大学情報

埼玉大学 教育学部 保健体育講座 教授 細川 江利子 先生

埼玉大学 教育学部 保健体育講座 教授 細川 江利子 先生

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メッセージ

自分にできるかどうかわからないとか、苦手だからとか思わず、まずは踊ってみましょう。踊りは遠いところにあるものではありません。あなたもうれしいときに飛び跳ねたり、身ぶり手ぶりをつけてしゃべったりするでしょう。それがダンスなのです。実は気づかないうちに、みんな踊っているのです。「みんな違って みんないい」「ダンスは人を選ばない」、これがダンスの魅力です。ダンスに興味がある、ダンスが好き、先生になってダンスを子どもに教えてみたいというあなた、大学でダンスを学んでみませんか?

埼玉大学に関心を持ったあなたは

埼玉大学は、総合大学として有為な人材を育成する、首都圏大学として社会とリンクし還元する、世界に開かれた大学として国際交流を推進する、の3つが特色です。TOEIC600点を目標に画期的な英語教育を実施しています。学生諸君が、高度な専門知識に加えて幅広い教養と国際感覚を持ち、社会に貢献することができる市民・職業人に成長できるよう、教育上のさまざまな工夫を施しています。