道路の真ん中に遊具がある? 理想的な生活道路とは
道路の役割
道路は、さまざまな機能を有しています。まず思い浮ぶのは、人が歩いたり車が走ったりする移動のための機能です。そのほかにも、水道管やガス管などを埋設するインフラ維持の空間であり、道路があることで風通しが良くなり、向かいに建物が建っても採光が得やすいという効果もあります。防災の面では、火災が発生したときに、道路の幅が空いていることで延焼が止まるという役割も期待されています。
ヨーロッパでは
現在の日本は、移動の役割が重視され、走行している車などを邪魔してはいけないという規則が法律上に記されています。しかし、昔は道路上で近所の人が立ち話をしたり、子どもたちが遊んだりして、通行のためだけの空間ではありませんでした。ヨーロッパでは1970年代から、住宅地内にある一定の道路については、主に生活空間として使われることとして、車は人に配慮しながら走行しなければならないという交通ルールが導入されています。かなりユニークな例では、真ん中に遊具を設置した道路もあるほどです。救急車などの緊急車両が通り抜けられる幅を確保しつつ、子どもが遊ぶことを優先しているのです。
道をデザインする
移動の役割を担いつつ生活空間として道路を使用するには、道路自体を工夫するハード面の取り組みが必要です。道路を蛇行させたり、路面の一部を膨らませたりすることで、走行する車のスピードを抑制し、生活空間としての安全を確保できます。しかし、これらは大掛かりな工事と高額な費用が必要なために、すべての道路に取り入れられるわけではありません。
そこで、既存の舗装を塗装する路面装飾の可能性が研究されています。道路の一部に塗装で模様を施した際、運転にどのような影響を及ぼすかを実験・調査し、人間工学的な知見を積み重ねています。それに加え、法律の改正や住民への周知といったソフト面の取り組みも進めなければいけません。そこに住む人の暮らしやすさを考えて、ハード、ソフトの両面から道路を見直す必要があるのです。
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先生情報 / 大学情報
日本女子大学 建築デザイン学部 建築デザイン学科 ※2024年開設 教授 薬袋 奈美子 先生
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