数理科学で「都市」の未来や暮らしをデザインするって?
「都市」のあり方を考える
「都市」と聞くと、東京や大阪を連想する人が多いと思いますが、「都市=大都会」ではありません。都市とは「人が集まるところ」という意味を持っていて、現在の日本では約4割の人が人口30万以下の「地方都市」に住んでいます。こうした小規模な街も含め、そのあり方を考えるのが「都市計画学」と呼ばれる学問分野です。
都市計画で扱うテーマとして、例えば食料の問題があります。既存の商店の廃業などにより、生鮮食料品の入手が困難になっている地域があるのです。そこは「フードデザート(食の砂漠)」と呼ばれ、車で移動できない高齢者が増えるにつれて大きな問題となっています。「まち」が抱えるこのような課題に対し、施設の立地や人口分布、交通システムなどの分析を通じて改善策を見つけ出すのも都市計画学の研究の目的です。
「ゲーム理論」で、人々の行動を予測する
都市計画には、施設の整備だけでなくルールの策定なども含まれます。例えば、ごみの分別について考えてみましょう。ごみを出す人の立場になってみると、分別は面倒で自分にメリットはありません。論理的に考えると、誰も分別に参加しないはずです。しかし多くの人は、一定数を超える人が分別を行い、それが有効に機能しているのなら協力しようと考えます。その「行動を変えるレベル(行動転換点)」を明らかにして、そこを超えさせる方法を見つけることが必要です。このように、人の考えや意思決定を数理的に分析する手法を「ゲーム理論」と呼びます。
都市計画学のアイデアに数学・経済学理論をプラス
都市計画を考える上では、土木計画学、地域科学や社会学のアイデアのほかに、数学・経済学理論も取り入れて方策を検討することが求められます。多様なデータが大量に蓄積されている現在では、数理的な処理によってデータを分析し、診断することがますます重要になっています。都市計画学は、さまざまな分野の知識を駆使して都市の未来を見据え、人々の生活の質を上げていくための学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 工学部 社会システム土木系学科 教授 福山 敬 先生
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