南海トラフの巨大地震による被害を防ぐ、新しいビジネスモデルとは
災害に強くなっている実感が乏しいのはなぜ?
阪神・淡路大震災から23年経ちますが、当時と比べて、災害に強い社会になったなぁという実感に乏しいとは思いませんか。なぜなのでしょうか。それは、私たちの暮らしに身近な業界の多くは防災が専門ではないため、災害に対する安全・安心目線を武器にしようという発想が生まれないからでしょう。
阪神・淡路大震災では、犠牲者の9割以上が建物の倒壊や家具の転倒などが原因で命を落とされました。約300名の20代前半の若者が犠牲になったことも忘れてはなりません。こうした悲しい経験を踏まえて、二度と同じことが起こらない社会になっているでしょうか。答えはノーです。
サービス業における防災を学んだ人材の不足
大学4年間の下宿に使う部屋を探すとき、これらの教訓を踏まえれば、住むエリアや部屋の階数などは、利便性だけでなく、安全性の面からもよく考えて決める必要があります。しかし、下宿の準備をする上で欠かせない不動産賃貸会社や引越し会社には頼れません。そもそもそのようなサービスがないからです。これらの会社に防災を学んだ人材はいません。自社の競争力を強化するために、防災・減災の視点から物件を紹介する、家具を設置するなどのサービスを提案できる人材もいないのです。
安全・安心の新時代の幕開け
しかし、時代は変わろうとしています。私たちは今、我が国に経済的な豊かさをもたらしてくれた日本の多様な分野の技術やサービスが安全・安心分野に応用される時代、「防災が専門ではない分野」が安全・安心分野の主役となる新時代の入り口に立っています。
米国シリコンバレーには、新ビジネスを始めた会社が大企業によって買収され、そのビジネスがさらに広範に展開されるという仕組みがあります。関西が「安全・安心分野のシリコンバレー」になることも夢ではありません。実は、すでに、大阪府堺市にある灯油巡回販売業者と連携し、防災・減災に向けた新サービスの研究・開発が進んでいるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
関西大学 社会安全学部 安全マネジメント学科 准教授 奥村 与志弘 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
土木工学、防災工学、社会安全学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?