いま問われる日本の二院制の意義
二院制が少ない世界の議会事情
民主主義の国はどこでも日本のように、議員は選挙で選ばれ、二院制による議会政治が行われていると思っているなら間違いです。世界各国の議会制度を見渡すと、多くの国は一院制をとっていて二院制を採用している国のほうが少ないのです。実際、現在国連に加盟している約190カ国のうち二院制の国は3分の1に過ぎません。
議会制度の母国であるイギリスは二院制ですが、上院にあたる貴族院は世襲貴族などで構成され、国民による直接投票で選ばれているわけではありません。上下両院の議員を国民の直接選挙で選んでいるのは日本とアメリカくらいなのです。
イギリスに「ねじれ国会」はない
イギリス議会で上院は、政治上形式的な存在であって「下院の優越」が確立されています。民意と直結する下院に強い権限が与えられ、その意思が一元的に通ることで議院をうまく機能させているのです。
日本の議会にも憲法上、予算や条約の承認、内閣総理大臣の指名などについて「衆議院の優越」が認められてはいるものの、肝心な法律案に関しては、選挙の結果で国会の与野党の勢力図がねじれたりすると、衆議院が優越しない事態が起こり得ます。
国会が意思決定できない異常な姿
衆議院で与党多数で可決、参議院で野党多数で否決された法律案は、もう一度衆議院に戻されて出席議員の3分の2以上の多数で可決されなければ法律になりません(憲法第59条)。
これは、衆議院で与党に3分の2以上の議席がない状況下では、参議院がNOといった法案は成立せず、結果的に参議院の意思のほうが優先することを意味します。
法案が成立しなければ実現しない政策もあります。国会が立法府(立法機関)としての責任を果たせなかったら、重要な政策課題は先送りされ、そのつけは結局社会にはね返ってきます。こうした政治の停滞を招くねじれ国会の問題点が明らかになった現在、二院制をどうするか、党派を超えて政治的な制度改革の議論を始めるときだと言えるでしょう。
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埼玉大学 社会調査研究センター 教授 松本 正生 先生
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