国際協力におけるスポーツの役割
スポーツに秘められた力
スポーツをする人なら、プレイする楽しさや技術が向上する達成感、仲間との連帯感など、スポーツのもたらす多くのメリットを実感していることでしょう。また個々の体力に合わせて工夫することで、老若男女が楽しめるのもスポーツのよいところです。
近年、このようなスポーツの特長を「社会開発」に役立てようという動きが広がりつつあります。スポーツを貧困、紛争、保健、教育など、開発途上国が抱える社会的課題を解決する糸口にして、生活環境の改善・向上を図ろうというのです。
伝えたい層に草の根アプローチ
例えば、ジンバブエの若者にエイズ啓蒙を行うとき、野球が役立ちました。地域のコミュニティでは、保健所や診療所がそのような知識を伝える拠点になりますが、伝えたい相手である若者はあまりそういう場所を訪れません。教会では性的な話はタブーです。学校ではそこに通えない若者もいますし、先生たちもエイズに対する知識がありませんでした。そこで野球の普及を行い、練習に来る若者に、エイズの専門家であるNGO職員が正しい知識を教えたのです。
今後さらに重要になるスポーツを通じた社会開発
国際協力のあり方を考えたとき、スポーツを通じた社会開発は今後ますます重要になっていくでしょう。日本に住む私たちからみれば、途上国の貧困や紛争などは縁遠く感じる問題かもしれません。しかし、家族、友だち、地域、日本、世界と意識を広げ、考えることが大切です。
21世紀に入り、国連では紛争・復興地域や貧困地域などでスポーツ活動を推進しています。また実績のあるスポーツ選手が途上国を訪ねて子どもたちにサッカーや野球を教えたり、NPOがマラソン大会の運営に協力したりと、民間でもスポーツによる国際協力が行われています。喜びや楽しさを共有し、民族や宗教、言語の違いをも超える力を持つスポーツは、国際的な課題の解決に貢献する大きな可能性を秘めているのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 人間科学部 教育学科目 生涯教育学分野 教授 岡田 千あき 先生
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スポーツ社会学、開発学、国際協力学先生が目指すSDGs
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