働いている子どもは、かわいそう?
政策の有効性を検証
政府が打ち出す政策は、国全体やグローバルな経済を考えるマクロな視点から、企業や家庭といったミクロな視点のものまでさまざまです。経済学は政策との関わりが強い分野ですが、中でも開発経済学では、貧困という問題を解決するための政策を研究します。すべての政策が効果を発揮するわけではないので、政策ごとにどこが有効でどこが有効ではなかったのか、データから科学的に検証していくことが必要です。
カンボジアの児童労働を考える
ある途上国で子どもたちが学校へ行けず働いている、ということを知り、「貧しいから学校へも通えないのはかわいそう」とネガティブなイメージを持つ日本人は多いでしょう。しかし、学問としてはイメージに距離を置くことが重要です。
カンボジアの児童労働を例にとると、さまざまな事情が複雑に絡んで、家庭が「学校に行くより家で働いたほうがいい」という選択をしている場合もあります。カンボジアの農村でも義務教育は普及していますが、学校へ行かずに自発的に働いている場合、家庭が助かることはもちろん、家の仕事を覚えれば将来の仕事にもつながることが挙げられます。土地を持たない貧しい農家よりも、広い土地を持つ豊かな農家の方が、より子どもに頼っていることもあります。また近所の人を手伝いに雇う、余った土地をほかの人に貸してお金を得る、といった状況が整えば、子どもに頼らなくてよくなり、児童労働が減ったという分析結果も出ています。
本当の問題を見つけてメカニズムを解明
こうしたミクロな視点での経済研究では、国が統計として公表している家計調査データや、家事労働と消費行動を組み合わせたりして分析します。家族の時間の使い方がどう変化していくかに注目するのです。細かなデータを集めて、全体では見落とされがちな家計の動きに注目するといった研究手法は、近年発展してきました。「あの政策は効果がなかった」で終わらずに、本当の問題に光を当てて、貧困などが起きる複雑なメカニズムの全容を解明していくことが重要なのです。
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先生情報 / 大学情報
武蔵野大学 経済学部 経済学科 講師 那須田 晃子 先生
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