経済学の奥深さがわかる! 「経済思想史」の力
「道徳哲学」が土台だった経済学
経済学を最初につくったのは、18世紀のスコットランド出身のアダム・スミスです。彼は道徳哲学者であり、人々の心の豊かさを求める道徳哲学を土台とした経済学を誕生させました。
今日、心の豊かさや環境保護、福祉、社会保障の拡充などが求められています。かつてその点を重んじていた道徳哲学の考えが、経済学にも必要だと今見直されています。経済学がモラル・サイエンス(moral science)といわれる所以もそこにあります。経済学は、イギリスで伝統的に培われてきた道徳哲学といわれる歴史上の深い意味をもっています。
歴史からその国の経済・社会のありようが見える
時代によって社会構造や産業構造が異なるため、過去の歴史をそのまま現代に活用・応用することは難しいでしょう。しかし歴史を知ることで、現代への理解を深めることができます。国によって異なるため一概にはいえませんが、ヨーロッパでは概ね、消費税率は20~25%前後で、所得税率も日本よりも高いですが、医療費や教育費を原則無料にするなど社会保障や福祉が充実しています。なぜそうした福祉国家が成立しているのかといえば、数百年という近代化の長い歴史が関係しています。「経済思想史」は、今ある経済や社会のありようを歴史から明らかにすることができます。
200年以上前に予測された現代
国際経済を理解するには、国際貿易の歴史の理解も不可欠です。19世紀に活躍した経済学者のリカードウは、各国が得意とする商品を輸出して不足するものを輸入することで世界全体が豊かになるという国際貿易論を説きました。それに対してマルサスは、戦争などにより貿易ができなくなった時のリスクが高いと反論しています。今、世界では戦争による貿易への弊害が実際に起きていますが、それを200年以上前に指摘していた経済学者がいるのです。
このように「経済思想史」を学ぶことで、今の経済や社会の現状を深く理解できます。さらに、これからの経済社会のあるべき姿を見通す力となるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
南山大学 経済学部 経済学科 教授 荒井 智行 先生
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