日本語は難しい言語?
言語の習得には母語が影響する
世界中の言語の中で、日本語は難しい言語なのでしょうか? 答えはYESでもあり、NOでもあります。どの言語にも共通して言えることですが、他言語の習得には、学習者が幼少期から自然に習得した「母語」が大きく影響するからです。例えば、韓国語は文法的な構造が日本語と似ている言語なので、韓国語母語話者にとって日本語の文法のルールは理解しやすいかもしれません。また、漢字圏の言語を持つ人は、日本語の中の漢字がヒントになるため、言葉の意味を理解するのは容易です。しかし、非漢字圏の人にとって覚えるのが難しい厄介なものとなります。
言語は文化の表れ
言語自体の違いだけではなく、その言語をどう使うのかにも違いがあります。母語と日本語の使い方がどれだけ違うかによっても難しさが変わるのです。例えば、誰かにお願いをして断られたり、お願いをされて断る場面はどの言語を使っていても起こります。でも、どう断るのか、断られたらどうするのか、どう理由を説明するのかなどは、言語や文化によって違いが出るのです。また、言語を使用している場面で、そこでの背景情報や状況がどれだけコミュニケーションに影響を与えるのかも言語や文化によって異なります。文字通りの意味だけでコミュニケーションをとる言語や文化を背景とする人は、背景情報や状況から強く影響を受け、それらを踏まえてコミュニケーションをする日本語を学ぶときに困難を覚えるはずです。
他者との歩み寄りのコミュニケーション
忘れてはならないのは、言語は1人で孤立して使用することはほとんどないということです。ほとんどの場合、コミュニケーションをとる相手が存在するはずです。その相手とは互いに足りないところを補い合い、できないことをサポートしながら、互いに歩み寄りながら言語でコミュニケーションをとっているのではないでしょうか。日本語を母語としない人が日本語を話している時も、相手がどうやって共同で会話を作ろうとするのかによって、日本語の難しさは変わってくるのです。
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東北大学 文学部 人文社会学科 准教授 島崎 薫 先生
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