スマートフォンの文字入力に欠かせない「五十音図」の歴史

始まりはサンスクリット語
小学校1年生で学習する「五十音図」は、日本独自のものと思われていますが、その起源は仏教と関わりがあります。お経は古代インドのサンスクリット語や、それを訳した中国人の中国語で書かれていたので、日本人には難しいものでした。そこで平安時代に明覚上人という僧侶が、これを読むための音声を並べたのが、五十音図の始まりといわれています。その順番は「あいうえお……」に近いもので、これは古代インドの音声学の影響を受けています。つまり五十音図はインドにルーツを持っていたのです。
また当時、五十音図は、古代インドの梵字(ぼんじ)で書かれることも多く、学問の世界だけで使われるものでした。
時代により評価は左右される
江戸時代に入ると、国学者が五十音図を使い、「書かず」「書きたり」「書く」といった動詞の活用を説明するようになり、「文法」が成立しました。また奈良時代の音声を五十音図を使って復元したり、「カ行は固い」「サ行は滑らか」などと音声と意味を結びつけたりと、さまざまなことに活用されて、五十音図は高く評価されました。しかし明治時代になり、アルファベットと西洋音声学が導入されると、五十音図は完ぺきなものではないことがわかってきます。
時代により評価が左右されますが、西洋の音声研究が入ってきても五十音図はなくなることはなく、現代まで日本人に必要不可欠なツールになっています。
身近過ぎて存在価値に気づきにくい
一般的な日本人が改めて五十音図をそのまま意識する機会といえば、その代表格はスマートフォンの文字入力でしょう。「あかさ……」と横に並んでいます。そのほかにも、名簿や書籍の索引、国語辞典を引くなど必要な場面は数多くあります。もしこれが英語や、日本語でも「いろは……」を使うしかないとなると、入力や検索は非常に困難になります。
身近過ぎて存在価値に気づきにくい五十音図ですが、日本語の音声の基礎であり、コミュニケーションツールとして大きな役割を果たしているのです。
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