講義No.10645 建築学

地域のまち並みがもつ価値とはなんだろう?

地域のまち並みがもつ価値とはなんだろう?

その地域らしい景観を守るために

まち並みは、その地域がもつ資源や歴史、気候条件といったさまざまな要素が絡み合って形成されています。そこにどんな建物や施設を建て、あるいは壊すのかといった判断は、その建物の所有者である住人や事業者に委ねられ、町並みは日々変わり続けるものです。ただし、行政によってコントロールされ、地域の景観が守られているケースもあります。建築学の中の都市計画や都市景観といった分野では、その地域らしい景観とは何かを調査・研究によって明らかにして、その結果を地域の都市計画に役立てています。

まち並みを形成する要素

例えば、「100万ドルの夜景」で知られる香港は、主に海沿いにビルが立ち並んでいます。その背後に低い山があるのですが、建物の高さがその山の高さを超えないように規制され、景観が守られています。このような規制は、同じく美しいまち並みで知られる神戸でも行われており、中心街にビルを建てる場合は、六甲山の山並みを基準にして高さが規制されています。
地域らしい景観は、こうした一目でわかる美しさ以外にも見出すことができます。時にはその地域に暮らす人ですら意識していない何気ない風景や、そこを歩く人たちの特徴でさえも、まち並みを形成する要素の一つになり得るのです。

行政にフィードバック

地域らしい景観を明らかにするには現地を丹念に調査する「フィールドワーク」が欠かせません。何度もその町を歩き、建物や街路を写真やスケッチに収め、公園などのオープンスペースをマップに記すなど、街の特徴を可視化します。また地域住民へのヒアリングや文献資料を通して、街や建物の歴史を調べることも欠かせません。
こうして集め、分析した研究結果は、各行政にフィードバックされ、最終的には建物の規制や都市計画のガイドラインづくりに反映されます。研究成果が実際のまち並みや眺望に影響を与えるという点は、この研究の魅力といえるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神戸大学 工学部 建築学科 准教授 栗山 尚子 先生

神戸大学 工学部 建築学科 准教授 栗山 尚子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

建築学、都市計画学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校時代に、自分が置かれている環境について深く考えることは少ないかもしれませんが、実は自分を形成する上で、環境は大きな影響を及ぼします。自分や家族、友人が暮らす地域や、その中での生活といったことに興味があるなら、ぜひ建築学を学びましょう。
設計や都市計画といった専門知識をもつことで、街や建物に対する見方が変わり、将来自分がどこでどんな生活を送るのかを考える上でも、とても役立ちます。学問としての奥深さはもちろん、ライフスタイルをより豊かにしてくれるという点も、建築学の魅力です。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神戸大学に関心を持ったあなたは

神戸大学は、国際都市神戸のもつ開放的な環境の中にあって、人間性・創造性・国際性・専門性を高める教育を行っています。
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