地域のまち並みがもつ価値とはなんだろう?
その地域らしい景観を守るために
まち並みは、その地域がもつ資源や歴史、気候条件といったさまざまな要素が絡み合って形成されています。そこにどんな建物や施設を建て、あるいは壊すのかといった判断は、その建物の所有者である住人や事業者に委ねられ、町並みは日々変わり続けるものです。ただし、行政によってコントロールされ、地域の景観が守られているケースもあります。建築学の中の都市計画や都市景観といった分野では、その地域らしい景観とは何かを調査・研究によって明らかにして、その結果を地域の都市計画に役立てています。
まち並みを形成する要素
例えば、「100万ドルの夜景」で知られる香港は、主に海沿いにビルが立ち並んでいます。その背後に低い山があるのですが、建物の高さがその山の高さを超えないように規制され、景観が守られています。このような規制は、同じく美しいまち並みで知られる神戸でも行われており、中心街にビルを建てる場合は、六甲山の山並みを基準にして高さが規制されています。
地域らしい景観は、こうした一目でわかる美しさ以外にも見出すことができます。時にはその地域に暮らす人ですら意識していない何気ない風景や、そこを歩く人たちの特徴でさえも、まち並みを形成する要素の一つになり得るのです。
行政にフィードバック
地域らしい景観を明らかにするには現地を丹念に調査する「フィールドワーク」が欠かせません。何度もその町を歩き、建物や街路を写真やスケッチに収め、公園などのオープンスペースをマップに記すなど、街の特徴を可視化します。また地域住民へのヒアリングや文献資料を通して、街や建物の歴史を調べることも欠かせません。
こうして集め、分析した研究結果は、各行政にフィードバックされ、最終的には建物の規制や都市計画のガイドラインづくりに反映されます。研究成果が実際のまち並みや眺望に影響を与えるという点は、この研究の魅力といえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 工学部 建築学科 准教授 栗山 尚子 先生
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