被災地域再生のための、市民による太陽光共同発電所
地域再生のための持続可能な環境政策
未曾有の被害をもたらした東日本大震災で被災した地域では、震災を機に以前から課題だった過疎や高齢化などがさらに進行してしまったケースが多く見られました。復興に際しては、その場限りの解決策ではなく、地域社会の持続性を考慮した活動や政策を考えていく必要があります。少しずつですがその兆しが見えてきたケースもあります。
市民が共同で太陽光パネル発電所を建設・運営
岩手県北東部、太平洋に面した野田村は、人口4,300人ほどの小さな村で、高齢者が約3割を占めます。震災で津波の被害を受け、仮設住宅に住む高齢者の特に男性たちは落ち込みがちでした。そんな状況をなんとかしたいと、仮設住宅で暮らす男性の一人が「地域再生のために何か始めよう」と仲間を募り、地元の木材を使って木工製品を作っていた「だらすこ工房」で活動を始めました。
「地域を再生するには、まずはエネルギーの自立を」ということで、岩手県にあるNPO法人や地域による共同発電所を支援する東京のNPO法人などの協力を得て、市民共同の太陽光パネル発電所を建設することにしたのです。48kW/216枚の太陽光パネルで予想年間発電量52,000kWh、予想年間売上高220万円をめざしています。建設資金として一口10万円189口の市民ファンドを募りました。配当は現金か野田村の特産品が選べ、目標は年1%です。
市民共同発電所ができたことで新たな試みも
2013年6月、「野田村だらすこ市民共同発電所」が売電を開始し、地域の人たちの思いやさまざまな出会い、その間をつなぐ人たちがいて、ここまでの取り組みができました。これを機に野田村を訪ねる人が増え、市民共同発電所に興味がある人たちを対象に「自然エネルギー学校」を開催するなど、新しい試みも行われています。これは、ある意味で復興だけではなく、地域が将来的に持続可能な形で新しく生まれ変わる現象の一つの事例です。被災地だけでなく、持続可能な環境政策を考える上でも参考になるケースだと言えます。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 人文社会科学部 地域政策課程 准教授 中島 清隆 先生
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