地域の自然と共生する人々に、暮らしの知恵と文化を学ぶ
人と自然の関わりを、経験や記憶から明らかにする
民俗学は人を研究する学問です。「環境民俗学」は、地域に根差して暮らす人々が、周囲の環境とどのような関わりを結んできたかを問う学問だといえます。研究対象は、自然と向き合いながら暮らす地域の人たちです。現地に赴き、そこで暮らす人々が記憶していること、経験してきたことを、見て確かめ、聞いて情報を得るフィールドワークが、最も重要な研究手段となります。
経験の歴史からこれからの未来を考える
自然と向き合って生きてきた人々の日常には、周囲の自然を持続的に利用するための知識とルールが存在しています。例えば、焼畑による作物の栽培や植物の利活用といった「食」に関わること、あるいはマタギによる野生動物の狩猟や、養蚕による絹の生産といった生き物の「命」との向き合い方などです。自然と折り合いをつけながら、調和を保って継続してきた暮らし方は、現代社会の中で大きく変わりつつあります。その変化の過程や理由を知ることは、これから自然とどう向き合っていくべきかを知る重要な手掛かりになります。
フィールドワークの先にある社会貢献
これからを生きていくためのヒントは、先人の生き方の中にたくさん詰まっています。かつて生活で大切にされたもののなかには、未来の生活にも必要なことがあるはずです。次の世代に継承すべき知識や技術もありますが、高齢化や人口減少が著しい地域では、残したくても残せないことが多いのです。一方で、継承すべき生活文化を「未来の社会に必要な新しい価値」としてたくさんの人が認めれば、必然的に残っていくはずです。フィールドワークで培った知恵と経験を生かして新しい価値を見いだすこと、そして、地域に暮らす人の新しいつながりをつくり出し、持続可能な社会に貢献することも、環境民俗学の大きな役割です。
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先生情報 / 大学情報
東北工業大学 ライフデザイン学部 生活デザイン学科 教授 岸本 誠司 先生
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