牛のゲップと温暖化? ~酪農経営の環境対策とは~

牛のゲップと温暖化? ~酪農経営の環境対策とは~

メタンの温室効果はCO₂の約30倍

「牛のゲップが地球環境に影響している」ことを知っていますか? 実は、牛はルーメンという胃袋での消化過程でメタンガスを発生させ、ゲップとして排出しているのです。二酸化炭素(CO₂)など、地球温暖化の原因となる気体を「温室効果ガス」と呼びますが、メタンガスの温室効果はCO₂の約30倍です。日本の農業において発生する温室効果ガスの約6分の1は、牛のゲップや糞尿などから発生するメタンだと考えられています。農業と地球環境の影響を考えた場合、こうしたメタンの発生をいかに削減するかということも重要になります。

技術を導入すればいいというわけではない

酪農で発生するメタンガスを抑える技術としてさまざまなものが開発されています。例えば、「バイオガスプラント」と呼ばれる施設では、蓄積したふん尿から発生するメタンガスを利用してエネルギーを得ることができます。その量は、牛を100頭飼っている酪農農家なら、20~25世帯分の電気をまかなえるほどです。ただし、バイオガスプラントの導入には何億円もの予算が必要になるため、100頭規模の農場では割に合いません。このように、新しい技術の導入には予算や規模などの条件があり、経営者は自分の農場の経営実態に合わせた判断を迫られます。判断を間違えれば、事業を継続することも難しくなってしまいます。

必要なのは経営、社会、自然の持続性

農業を担う人材が減ってきており、農業経営の存続、つまり「経営の持続性」が重要課題となっています。それには個人の農家を取り巻く地域の環境など、「社会の持続性」を維持する必要があり、さらに長い目で見れば、「自然の持続性」なしに農業を考えることはできません。
「酪農経営学」という学問は、農場の実態を調査するとともに、技術の導入がどのくらいの効果があるのかなど、目に見えないものを数値化して提示することで、経営者の意思決定をサポートする学問でもあります。

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先生情報 / 大学情報

酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 教授 日向 貴久 先生

酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 教授 日向 貴久 先生

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農業経営学、畜産経営学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校までの勉強は、問いに対する解の出し方を学ぶことが中心ですが、大学では問いを作ることも重要になります。世の中の矛盾や課題を見つけ、なぜだろう、どうすればよいのだろうと問いを立てることや、その問いに自分なりの解や意見を作ることは社会において必須のスキルです。
経営管理や意思決定は、経営者だけの問題ではありません。何を食べるか、どう生きるかなど、日常における多くのことは自分の意思決定の結果で動くことです。常に社会の事柄に広くアンテナを張り、自分だったらどうするかという視点を意識してください。

先生への質問

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酪農学園大学に関心を持ったあなたは

北海道の政治・経済の中心都市札幌から快速電車で10分、本学はそこに132haの広大なキャンパスを構えています。世界の人口が増幅を続ける中、40%前後の我が国の食料自給率は、今後ますます問題となるのは確実です。そうした環境下にあって、大地を健やかに育て、健康な食物を育み、それを食して健やかな人が育つ。こうした「循環と共生」をテーマに掲げながら、学生一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出せるような教育を実践することを使命と考えています。