講義No.11644 酪農・畜産学

おいしい肉を、いつまでも食べられる世界に

おいしい肉を、いつまでも食べられる世界に

日本は肉不足になるか

今も世界の人口は増え続け、それに比例して食肉の需要も増大し続けています。国連食糧農業機関(FAO)等によれば、食肉を輸入に頼る国は、今後食肉の獲得が困難になる可能性が示唆されています。現在の食肉生産システムでは20年後には日本への供給量が減り、今のようにおいしいお肉を安価で食べられなくなるかもしれないのです。それなら牛や豚、鶏の飼育頭数を増やせばいいかというと、そういうわけにもいきません。動物たちの飼料の多くは人も食べられる小麦やトウモロコシです。これら穀類の奪い合いになれば今度は食糧不足が懸念されます。このような食肉資源の不足が懸念される未来に備えなければなりません。

「異常硬化胸肉」の発生

鶏肉は世界で最も食べられている食肉です。肉用鶏をブロイラーといいますが、ブロイラーは長年の品種改良により生後わずか50日程度で出荷可能です。供給量が多く、牛や豚のような宗教上のタブーもないので大量に消費されます。しかし近年、鶏の胸肉異常が世界各国で報告され、特に「異常硬化胸肉」が問題視されています。これは肉がゴム状に硬くなる現象です。調理すれば食べられますが、色が悪くて見た目がよくありません。異常硬化胸肉は全体の数%の割合ですが、もともとの飼育数が多いために大量の胸肉が廃棄されたり、品質低下を理由に低価格で取引されたりしています。原因として、生産性を高めるための品種改良等が考えられていますが、はっきりしません。種鶏の種類も世界的に少なく、ブロイラー品種の隔たりもほとんどないため、世界中で異常硬化胸肉という現象が発生しているのです。

大切な資源を無駄にしないために

世界中で異常硬化胸肉をなくすための研究が行われており、日本でもエサや飼育方法から解決の糸口を探っています。さらに、品質(見た目)が悪いからと廃棄するのではなく、大切な食肉資源として最後まで有効活用する方法も模索されており、そうした研究が、将来の食肉不足解消の一助になると期待されています。

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酪農学園大学 農食環境学群 食と健康学類 教授 岩﨑 智仁 先生

酪農学園大学 農食環境学群 食と健康学類 教授 岩﨑 智仁 先生

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食肉科学

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メッセージ

誰にも確かな未来など予測できません。未来に備えてできることは、自身のアンテナを広げ、何にでも興味を持つことです。結果を見通せないことに対して「どうするのか」「どうなるのか」と臆病になることはありません。興味を持って物事を見ていくうちに、あなたにとっておもしろいと思えるものが必ず見つかります。
それが将来、何に結びつき、どこに落ち着くかといったことは誰にもわかりません。しかし、あなたの興味が発端となった未来が、つまらないものになるはずはないのです。

先生への質問

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北海道の政治・経済の中心都市札幌から快速電車で10分、本学はそこに132haの広大なキャンパスを構えています。世界の人口が増幅を続ける中、40%前後の我が国の食料自給率は、今後ますます問題となるのは確実です。そうした環境下にあって、大地を健やかに育て、健康な食物を育み、それを食して健やかな人が育つ。こうした「循環と共生」をテーマに掲げながら、学生一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出せるような教育を実践することを使命と考えています。