見えない未来を、より現実的に予測する社会シミュレーション
シミュレーションで「見える化」
物事をコンピュータ・シミュレーションによって「見える化」すると、未来がわかりやすく予測できます。その代表例が天気予報であり、同様に人の動き、社会の動きもシミュレーションによって予測できます。
例えば、安全な地域をつくるには万全な防災対策が不可欠です。自治体や企業による避難訓練は、数人から数十人規模で実施されますが、現実は何千人、何万人もの人たちを避難させる必要があります。そんな訓練はできませんが、人の動きを人工知能(AI)によってシミュレーションすれば、何が起こるかを知ることができます。
問題・課題をあぶり出す
大型施設での数千という人の避難や、ある町の浸水被害を想定した何万という人の動きをシミュレーションすると、どこに人が滞るか、何が問題かが見えてきます。施設では、出口や柱の周辺などに人が集まり、「群衆なだれ」の危険性がある場所もわかります。市町村の場合、土地勘のある人とない人で避難ルートが異なることや、予想より避難に時間がかかるといった問題も見えてきます。こうして問題が見えて初めて、安全な避難や誘導のための検討ができるようになるのです。
街づくりにも役立つ
より実際に近い予測にするため、詳細な人の動きを観測してモデル化し、シミュレーションに取り込みます。そして、「自ら判断して行動するエージェント(主体)」を複数存在させて、その動きを予測したものを、マルチエージェント・シミュレーションといいます。施設や地域の状況、災害の種類によっても起きることは異なります。複雑に絡み合っている要因を融合し、より現実に近い形で「未来を見える化」するのです。今は、VR(仮想空間)を利用して、人の行動を検証することも行われています。
これは、街づくりや都市開発に応用できます。どこにどんな店を配置すると人の流れがどうなるか、避難とは逆に、人を長く滞在させるにはどうするかという検証もできます。見えていない事象を見えるようにすることが、現実を動かすためのベースとなるのです。
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湘南工科大学 情報学部 情報学科 情報工学専攻 教授 浅野 俊幸 先生
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