船舶の排ガス規制に、シミュレーション技術を生かす
知られていない、船舶の排ガスの影響
日本は海に囲まれているので、ものを運ぶのに船が使われることが多い国です。もちろん、国内では車を使った物流も発達しています。では、輸送によって排出される排ガスはどのような状態になっているのでしょう。
自動車の排ガス規制は、日本ではかなり進んでいますが、自動車とは違い重油を主な燃料としている大型船舶の排ガスによる影響は、定量的には測られていないのが実情です。このような状況に対し何らかの対策を講じようと、国際的な機関なども動き始めています。
日本でも精度の高いシミュレーションが求められる
船舶の安全や船舶による海洋汚染など海事に関する国際協力をすすめる国連の国際海事機関(IMO)では、各国で船舶の排ガス規制を行ってもよいとしています。これは、自国に入る各国の船舶に対して規制をかけることができるというもので、アメリカやヨーロッパでは規制の動きが進んでいます。
船舶からの排ガスは大海原に出たらそれほど影響はないと言われていますが、湾内に入ると船が集中するので、陸域への大気汚染の影響も調べなければなりません。そのために日本でも精度の高いシミュレーションを行った上で、規制をする必要があると言われているのです。
北極海での影響評価にも生かす技術
大気環境学の分野では、大気汚染に関して、人間の健康やPM2.5の環境への影響がどれくらいあるのか、また、規制した時にその地域にどれくらいメリットがあるかを調べ、その数値を予測しています。
近年、地球温暖化の影響からか氷がとけて北極海航路が夏期の短い間、開通するようになり、今後多くの船舶が往来することも予測されます。これまで船舶が通らなかった場所ですから、国際的なルールの必要性も指摘され、船舶の排ガスが環境に与える影響を評価していかなければなりません。こういったところでも、大気環境のシミュレーション技術は生かされる可能性があるのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 海事科学部 海洋安全システム科学科 准教授 山地 一代 先生
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