スマホでインフラ点検? デジタルツインの実現をめざして

スマホでインフラ点検? デジタルツインの実現をめざして

コンピュータビジョンで社会課題を解決

少子高齢化や過疎化などが原因で、将来は住民のニーズに対応しきれない地域が増えるかもしれません。交通手段がないため買い物に行けなくなったり、人手不足で物流が滞ったりといった事例はすでに見られます。これらの課題を解決するためにも、ドローンによる配送や自動走行車などの技術開発が進められています。そうしたロボットが地形など周囲の環境を把握するための技術を開発する分野が、「コンピュータビジョン」です。

自動走行に欠かせない地図

ロボットの自動走行などを実現するためには、3D地図が欠かせません。従来の2D地図からは高低差や物体の前後関係が読み取れないため、衝突したり落下したりする危険性があるからです。
3D地図作りで注目されている技術に「3D点群解析」が挙げられます。3Dスキャナからレーザーを照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間で距離を測定する手法です。取得したデータをもとにコンピュータ上に空間を再構成すると、現実世界にそっくりな3Dデータを作れます。このように現実で収集した情報を使って街並み全体を再現する技術を「デジタルツイン」といいます。

3Dデータの可能性

3D点群解析は電柱や電線といったインフラの点検にも役立っています。まず車に3Dスキャナを取り付けて道路を走り、周辺のデータを取得します。次にスキャンデータをもとに3Dデータを作成して、異常が起きている箇所を自動で検出するのです。
3D点群解析は高精度で物体の検出や分析ができますが、スキャナがとても高価なため、すべての自治体が導入するのは困難でしょう。より安価で簡単な代替案の研究も行われており、その一つがスマートフォンのカメラで撮影した動画から3Dモデルを作成する技術です。動画内の物体を個別に切り出して3Dデータにすることも可能で、さまざまな角度から物体を観察できるようになります。検出の精度をさらに上げるため、AIの活用も視野に入れながら研究が続いています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

湘南工科大学 情報学部 情報学科 人工知能専攻 教授 安藤 慎吾 先生

湘南工科大学情報学部 情報学科 人工知能専攻 教授安藤 慎吾 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

コンピュータビジョン、情報工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

学問に限らず、自分が夢中になれる分野を見つけるのは大切です。私が研究を始めたのも、大学の授業で出会ったコンピュータビジョンに夢中になったからです。こうした気持ちは、物事に取り組むときの原動力になります。夢中になれる分野が見つかったあとは、そのなかで一つでも大きなことや、難しそうだと思うことにチャレンジしましょう。大学にも、コンペティションへの参加など大きなことに挑戦できる機会がたくさんあります。楽しんで挑戦することが成長への近道です。チャンスを逃さず、積極的に行動しましょう。

湘南工科大学に関心を持ったあなたは

湘南工科大学は「社会に貢献する技術者の育成」を大学のミッションに掲げる、1963年創立の工科系大学です。充実したICT環境と設備を備えた、湘南の自然豊かなキャンパスで、工科大学ならではの専門知識と実践的技術を身につけることができます。多くの授業でアクティブラーニングを取り入れており、学生が主体的に授業に参加し、実践を繰り返すことで理解を深めながら成長していく学修スタイルが特徴。また、少人数の担任制度や、きめ細かい就職支援などの各種制度により一人ひとりを手厚くサポートしています。