空気の流れをコントロールして、自動車の性能を高める
自動車の性能&デザインを左右する「空気」
自動車を走らせると空気抵抗を受けますが、その抵抗を減らすと燃費を向上させることができます。その一方で、走行時の安定性を得るには、空気の力で車体を下に押す力、ダウンフォースを生み出すことも必要です。これがないと、高速走行時に車体が浮き上がり、大きな事故につながりかねません。
より良い自動車をつくるには、走行時の空気の流れのバランスをいかに整えるかが重要になります。それを考えるために必要なのが流体力学です。
空気の流れを制する方法
流体力学は、空気や水などの気体や液体の流れに関わる学問です。コンピュータでのシミュレーションや実験装置を使い、空気の流れを可視化すると、そこで何が起きているのかがわかります。自動車であれば、ボディの傾斜や微妙な角度の違いによっても空気の流れが変わってくるのです。車体の前から後ろに流れた空気は、小さな渦を巻いて乱れています。渦を消してきれいに流すために、スポイラーやウイングというパーツをつけたりします。しかし、そうした見た目を嫌うユーザーもいるでしょう。
そこで着目されたのが、「プラズマアクチュエータ」です。これをつけると、渦を巻いていた空気が流れるようになり、空気抵抗を減らすことができます。プラズマアクチュエータは、プラズマを発生させる、薄い銅板を使った単純な装置です。プラズマが空気の流れを剥がしたり引っ付けたりする役割を果たすため、渦を消すことができるのです。
プラズマでデザインをより自由に
また、空気は振動すると音を出します。強風の時に、電柱の近くやビルの間で風の音がするのは、そこで発生した渦で空気が振動するからです。これにも、プラズマアクチュエータを活用できます。空気の渦を消すのに適したプラズマの周波数を探り、プログラムで制御します。空気の力をコントロールする方法はさまざまです。見た目が気になるパーツを使わず制御できるとなれば、クルマのデザインもさらに自由度が高まるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
愛知工科大学 工学部 機械システム工学科 教授 石原 裕二 先生
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