クリーンエネルギーで地球を救う!
農業廃棄物をエネルギー資源(バイオマス)に!
農業では、家畜の排せつ物や規格外の農産物など大量の廃棄物が発生し、その処分に大きなエネルギーと費用がかかります。こうした廃棄物系バイオマスは、発酵させれば肥料ができますし、その際に発生する熱も利用可能です。しかし農家の負担が大きく、有効活用のネックになっています。
現在、家畜の排せつ物の堆肥化はかなり進んでいますが、発酵促進のために暖める電気代が必要です。また野菜や果物の堆肥化については、理論上は可能であるものの、水分が多くて発酵しにくく手間がかかるため、石油などを使って焼却しているのが現状です。
堆肥化の過程で出る熱を利用
そこで、農家の負担を減らし、採算がとれるようなバイオマス利用装置の開発が進んでいます。その一つが、現状の家畜糞尿堆肥化装置を改良して、発酵で発生する70~80℃のガスの熱を発酵促進に利用する方法です。ガスを大気中に放出せず装置に戻し、ヒーター代わりに利用するのです。この改良の最大の特徴は、ガス中の有害成分を取り除くなどの手間をかけずに、かつ、電気代を節約できる点です。実用化に向けて、発酵に有害成分が影響しないかなどを詳細に検討している段階です。
「投入するだけでOK」な堆肥化装置を
この仕組みを、廃棄果物に応用する研究も行われています。例えば廃棄される温室みかんを堆肥化し、その過程で出る熱を温室に使えば、処分費用や暖房費も節約できて農家のメリットは大きくなります。問題は、水分の多いみかんは発酵温度が50℃程度と低いことと、収穫時期などによって、廃棄みかんの発生量にばらつきがあることです。そのため、熱として利用できるレベルまで温度を上げ、かつ装置へのみかんの投入量調整も不要な装置にするための改良が研究されています。
このように、農家の手間がかからず、かつ、コスト削減につながる堆肥化装置ができれば、日本中、世界中で廃棄物系バイオマスの活用が進み、環境問題の解決に大きな貢献になると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
愛知工科大学 工学部 機械システム工学科 教授 渡部 吉規 先生
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