材料の破壊をもたらす力と破壊の種類
物が壊れるときに働く力と壊れるメカニズム
材料の強度を研究するには、その材料が破壊にいたるまでに、どのような力がどのようにかかっているかを調べる必要があります。その基本は、単位面積あたりにどれぐらいの力が働くかという「応力」、そして材料の変形の大きさ、つまり「ひずみ」です。
材料の変形にもいくつか種類があります。調べたい面に対して垂直に引っぱる「引っぱり変形」というのに対し、面に対して平行な力が働くのを「せん断変形」と言います。材料の内部には応力が分布していますが、材料の形状や、欠陥の有無によって、応力の分布は均一にはなりません。何かの原因で応力が極端に高いところができ、それが破壊の原因になります。
破壊の形態もいろいろ
また、荷重のかかり方によって破壊の形態も3種類に分けられます。まずは単純に力がかかる「単純荷重」、そして、変形を繰り返すことで破壊にいたる「疲労」、そして、高温下で材料を引っぱった状態を長時間保持することで起こる「クリープ」という形態です。
単純荷重の特徴として、ある程度の力までは弾性といって、ゴムのように伸びても元に戻る性質がありますが、ひずみが大きくなると元に戻らなくなります。この性質を「塑性変形」と言います。中にはガラスなど、塑性変形せずにいきなり壊れる素材もあります。
材料は硬ければ壊れにくいというものではありません。硬いと大きな応力が1点に集中し、一気に破壊しますが、ある程度柔らかいと材料が変形するので応力が分散します。
破壊の研究のこれから
破壊の研究は古い学問ですが、新しい素材が出てくる限り終わることはありません。しかも、目に見える範囲の研究はかなり進んできましたが、今はミクロの視点での研究が主流になっています。つまり、塑性変形しているときに原子レベルでどのようなことが起こっているのかといった研究です。
そのため破壊は、最近では工学と物理学との学問の垣根を越えて研究されるようになってきました。これからは、ますますその傾向が高まっていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東京大学 生産技術研究所 革新的シミュレーション研究センター 教授 梅野 宜崇 先生
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材料強度学、材料力学、破壊力学先生が目指すSDGs
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