電気抵抗がゼロになる超伝導の不思議:物質科学研究の最前線
超伝導とは何か
超伝導とは、電気抵抗がゼロになる現象です。抵抗がないので、電圧が低くても大電流を流すことができます。この性質を活かして、強力な電磁石を作ることができ、医療機器のMRI(磁気共鳴画像)や超伝導リニアモーターカーに利用されています。また、抵抗がないため熱が発生せず、電力損失のないケーブルとしての活用も期待されています。
超伝導を理解するためには、物質を構成する電子の振る舞いを理解する必要があります。ミクロな電子の振る舞いは、「量子力学」によって記述されます。この量子力学にもとづけば、ミクロな電子は、粒子と波の2つの性質を併せ持つことが示されます。
電子の集団としての振る舞いを理解する量子統計力学
電子1個の振る舞いは量子力学によって理解されますが、超伝導を理解するためには、物質中に存在する膨大な数(およそ10²³個)の電子の振る舞いを理解する必要があり、量子力学だけでは不十分です。銅やアルミニウムは、なぜ電気を流すのでしょうか? シャープペンシルの芯であるグラファイトも電気を流しますが、一方で、同じ炭素原子の結晶であるダイヤモンドは全く電気を流しません。なぜでしょうか? これらの違いを理解するためには、電子の集団としての性質を理解する必要があり、そのための学問が「量子統計力学」です。量子統計力学にもとづけば、金属・半導体・絶縁体を、普遍的な基礎原理から理解できるようになります。
超伝導や新しい電子状態の探究に向けて
超伝導もこの量子統計力学にもとづいて理解する試みが続けられていますが、まだ完全に理解されたわけではありません。さらに、原子の種類や結晶の構造が異なれば、電子は異なる環境に置かれることになり、それまで予想もされなかった、電子の新しい顔を見せることがあります。それらを理解するためには、時には、従来の標準理論を超えて、新しい理論体系を構築する必要も出てきます。物質中における新しい電子状態の探究が現在も続けられています。
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先生情報 / 大学情報
奈良女子大学 理学部 数物科学科 准教授 土射津 昌久 先生
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物性物理学、量子力学、量子統計力学先生が目指すSDGs
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