銀河の「キズ」から、宇宙の成り立ちがわかる?
銀河には「キズ」がある?
銀河は星の集まりで、もともとは恒星が集まった「星団」が衝突し合いながら、次第に大きくなったと考えられています。そこで衝突した時にできた銀河の「キズ」を観測することで、宇宙の成り立ちを知ろうとする研究が進められています。人間も古いキズを見れば、いつ頃、どんなケガをしたかが想像できますが、銀河も同じです。星の衝突は現在も続いていて、キズのできた年代がわかると、どれくらいの大きさのものがぶつかったかが計算から推測できるのです。この方法を使って、宇宙に存在するとされている、目に見えない暗黒物質の存在も間接的に証明しようとしています。
銀河の「池」に石を投げ込むと?
ただし銀河のキズを見つけるのは簡単ではありません。遠くの銀河は観測しにくいので、近くに存在する、それも横向きになった凸レンズ状の端っこを選んで観測します。なぜなら端の薄い部分の方が、銀河のひろがりやねじれの角度などが正確に観測できるからです。
仮に銀河を「池」だと思ってください。石を池に投げると、たとえ石を見ていなくても、落ちた時の波紋を見れば、いつ、どんな大きさの石が投げ込まれたかがわかります。また、同じ大きさの石を投げたとしても、深い場所よりも浅い場所に投げた時の方が、波が大きく飛び散って目立ちやすいのです。銀河の観測でも同じことが言えます。
観測のための装置も手作りで!
観測は、市販の装置では対応できないので、研究者は自分で装置を製作します。とらえる波長や性能が異なるカメラを複数使い、条件や日時を変えて観測し、より正確なデータを得るように努力します。そうして銀河のキズを発見したら、コンピュータ・シミュレータでどれくらいの大きさのものがぶつかったかを推測し、さらに理論的に正しいかを検証していきます。このように実際に観測した情報をもとに、数学や物理の知識を使って、想像をめぐらせながら考える楽しさが「天文学」にはあるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
三重大学 教育学部 理科教育 教授 伊藤 信成 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
銀河天文学、天文学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?