漢字の使われ方から、古代の人の考え方を読み解く!
か・じつ・にち・び?
「11月3日は祝日で日曜日です」。この文には、「日」という漢字が4回出てきますが、すべて読み方が違います。外国人が日本語を学ぶ際、とても苦労するのがこの漢字の読み方です。なぜ一つの漢字に対して、複数の読み方が存在するのでしょうか。漢字とその読み方を知るには、『万葉集』や『日本書記』など古代の文献にまでさかのぼることが必要です。まだ、ひらがなもカタカナもなく、すべてを漢字で表現していた時代です。
「可我見」「作楽」はなんて読む?
日本では古くから、中国から入ってきた漢字を使用していました。しかしその使い方はとても自由で、当て字も自由自在、好きなようにアレンジをしていました。例えば、『万葉集』に出てくる「可我見」。これは鏡のことです。カガミという読みが合っているだけでなく、「自分を見られるもの」という鏡の機能もよく表しています。ほかにも、桜は「作楽」と書かれており、桜の木の下で楽器を奏でながら花見を楽しんでいた様子まで伝わる表現となっています。ほんの一部の人しか読み書きができなかった時代でありながら、非常に教養の高い人たちが存在し、このように漢字を創意工夫して使っていたのです。
古典の漢字から日本人の世界観を探る
このような当て字の事例は、古代の文献に多くみられます。現代まで使われているものもあれば、そうでないものもあり、これらを分類し、分析する研究が進められています。そもそも言葉の使い方を通して、物のとらえ方が見て取れます。例えば、「A君はじゃんけんでB君に勝った」と書くか、「B君はじゃんけんでA君に負けた」と書くかで、その人が何に焦点を当てて物事を見ているかがわかるのと同じです。
当時の人がどの漢字をどのように選び、どう使ったのかという研究は、当時の日本人が言葉と文字で、この世界をどう認知していたかを理解する研究でもあります。そして、過去の文献から人間の思考や行動を読み解き、「人間とは何か?」の一端がつかめれば、それは人間の未来を見通す材料にもなり得るのです。
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先生情報 / 大学情報
奈良女子大学 文学部 言語文化学科 日本アジア言語文化学コース 准教授 尾山 慎 先生
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