注目される脳の働きと作業療法
作業療法士は患者とともに歩む
作業療法は、筋肉や関節の運動器だけでなく、脳にも働きかけます。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって体にまひが残った人や、交通事故などが原因で記憶や判断力などに困難が生じる高次脳機能障害の人へのリハビリに用いられているほか、認知症の予防や発達障害のサポートなど、作業と脳の働きの関係に着目した活用が進んでいます。その中で作業療法士は、一方的に治療を行うのではなく、その人が興味を持って取り組めることを聞き出して、ともに1歩1歩進んでいく、伴走者のような役割を担います。
認知症予防には好きなことを続けるのが一番
認知症に関する研究として、高齢者を「パズルなどを用いたゲーム的な作業」「歩くことを中心とした運動」「思い出を話し合う回想法」を行う3つのグループに分けて、それぞれ3カ月後の変化を調べました。従来の研究では運動が最も認知症の予防効果が高く、回想法も以前から認知症の予防に良いといわれていました。しかしこの実験では、3つのグループともに、認知機能が加齢に伴って衰退するのを予防したという結果でした。
人の興味や関心はそれぞれです。その人が好きなことを続けていくこと、またそれによって他者との交流を持つことが、認知症の予防につながっていくと考えられます。このことは、作業療法の理念ともつながります。
障害があっても生活しやすくすることはできる
集中力が続かなかったり、感情のコントロールが苦手だったりする発達障害は、以前は本人の性格や生い立ちによるものと思われがちでしたが、脳の機能障害だということがわかってきました。つまり、脳の機能を分析することで、学校で集中力を保つにはどのような環境で、どのように教材を工夫して使えば良いかといった対策が見えてきます。自治体によってはすでに教育機関と作業療法士が連携し、具体的にサポートする方法を提案・実践しています。障害そのものの改善はできなくても、周りの働きかけによって、その人が生活しやすくすることはできるのです。
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東北文化学園大学 医療福祉学部 リハビリテーション学科 講師 高橋 由美 先生
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