自分の日常に置き換えて考える 作業療法士教育のいま
作業療法とは
作業療法士は、病気などの理由で失った日常に必要な動作や社会的能力を回復・向上させるためにリハビリテーションを行う専門職です。作業とは、「箸を持つ」「服を着る」といった一般的な生活の動作から、専門的な仕事の内容や、余暇の過ごし方などの個人的な活動まで広い範囲に及びます。作業療法士は患者とコミュニケーションを取りながら、その人の生活を理解し、生活の質を向上させるために効果的な作業を見つけるための治療プログラムを立案します。そのためには、生理学・解剖学・運動学などの基礎的な知識が必要です。
学びの課題と研究
作業療法士の教育では、臨床実習を通じて実践的な知識を身につけます。そのため、実習の前段階で基礎知識を固めておくことが理想ですが、実際の患者を見ずに具体的な疾患のイメージをつけるのは難しく、作業療法へのつながりが理解しにくいという課題があります。そこで、教える側の知識や経験をもとに、症例や作業療法の理解につながる教育方法が研究されています。その一つとして行われているのが、学生に自分自身の作業を具体的に考えさせる授業です。例えば、朝起きたら何をするかの具体例を学生に挙げてもらいます。この時に、もし左半身がまひしていたら、「布団をたたむ」「顔を洗う」「朝食を食べる」のような朝の作業が通常通りにできるかを考えさせます。同時に、左半身のまひを引き起こす可能性のある病気である脳血管疾患についての医学的な学習を行うことで、作業と疾患の関係をイメージしやすくします。
地域貢献にもつながる模擬実習
具体的な経験を積むには、学校内での模擬実習の充実も課題の一つです。現在は教師や先輩が患者役を務めていますが、地域の高齢者を参加させることも検討されます。これにより、学生にとって貴重な学びになるだけでなく、高齢者の社会参加という地域への貢献にもつながります。学内での学びが強化されれば、学生も臨床実習時に自信を持って、より高度な技術を習得できると考えられます。
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