渋滞からネットオークションまで、社会問題の解決に数学で挑む
社会システム工学とは
車で移動するとき、どういう経路をとれば移動時間が最小化できるのかは、課題を数理モデルとしてとらえ、最適な答えを求めるという「数理最適化」の手法で考えることができます。交通渋滞に対しては、「ゲーム理論」を使って、混雑がどういうふうにバランスをとって落ち着くのかを解析することで、渋滞の解消を図ることができます。このように、さまざまな社会問題を「数理最適化」と「ゲーム理論」を使って解決しようとする「社会システム工学」という研究分野が、「情報系」の学問の中にあります。
ほかの学問の知見も取り入れた研究
ゲーム理論は、例えばオークションのように利害の異なる複数の人が関わる場で、どのようにすれば、迅速で効率的な運用ができるのかという問題を数学で考える方法です。もともとは経済学の分野で研究されてきました。しかし、すべてが数学だけでコントロールできるわけではありません。
例えば、数理最適化やゲーム理論で導き出したネットオークションの運営について、被験者を使った実験を行って検証してみると、数学的には正しくても現実は理論通りにはいきません。行動経済学の視点も加えて、うまくいかない原因を突き詰める研究が必要になります。
大きな可能性を秘めた学問
交通渋滞の緩和などの社会問題は、人間の行動に加え、法律や文化も含めて考える必要があります。エスカレーターで右に立つか左に立つかといった、地域ごとに異なる文化を、制度をつくって一律にしようとすると、かえって効率が悪くなる場合があるのです。一つの問題に対して、シミュレーションをベースにしたり、ゲーム理論を使ったり、最適化の計算をして効率を高めるなど、多角的なアプローチの方法があります。
現在、工場での生産計画やコンビニチェーンの配送計画、石油パイプラインの設計など、さまざまな場面で活用されている社会システム工学は、まだ100年足らずの歴史しかない新しい学問です。まだ誰も足を踏み入れたことがない未開の地が広がっている分野なのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
電気通信大学 情報理工学域 I類(情報系) 情報数理工学プログラム 准教授 高橋 里司 先生
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社会システム工学、数理情報学先生が目指すSDGs
先生への質問
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