人工知能(AI)の成長を促す、「人間的な経験の学習」とは?
人工知能と人間の脳
人工知能(AI)とは、人間と似た知能を人工的に作り出したものです。人間の知能は脳の働きに依拠しているので、脳がどのような仕組みで知能を発揮しているのかを解明できれば、それをコンピュータにプログラムし、脳と似た働きをさせることができます。例えば、人の顔を認識するとき、脳は膨大な視覚情報の中から、顔の特徴を抽出しているはずです。肌の色、目・鼻・口などのパーツや、その位置関係などが、特徴であろうということは推測されていますが、そのほかにも未解明のさまざまなメカニズムがあります。
「機械学習」という方法
脳の情報処理のメカニズムは、全体像が十分に解明されているわけではありません。しかし、人工知能は脳の解明を待たずに、さまざまな方法によって進化を続けています。その方法の一つに「機械学習」があります。簡単に言えば、コンピュータ自身が与えられたデータを「学習」し、有用なパターンを抽出して識別の精度を上げられるようにプログラムする方法です。この方法によって、顔認証の性能は大きく発展しています。
コンピュータに「人間らしい経験」をさせる
また、人工知能の精度を上げる方法の一つに、コンピュータに「人間的な経験をさせる」という、ちょっと意外なアプローチも試みられています。コンピュータに物体識別させるとき、通常では数百万枚の画像が必要なのですが、人間の体内の病変などは、画像がそんなに多く入手できないこともあります。そこで病変の画像だけでなく、自然の風景やさまざまな質感など、人間の脳が成長過程で目にするものをコンピュータに学習させる試みです。
病変を見分ける能力の高い医師は、病変の画像だけでなく、風景をはじめさまざまなものを見て育っているのですから、コンピュータにも医師と似た経験を積ませれば、病変の識別能力の向上が図れるのではないかという発想です。
この試みによるコンピュータの病変識別精度の向上が認められており、今後の展開が期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
電気通信大学 情報理工学域 I類(情報系) メディア情報学プログラム 教授 庄野 逸 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
脳科学、工学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?