過酷な環境で動く半導体集積回路を作る! 〜ナノメートルの世界
超微細化するトランジスタ
スマホやタブレットの頭脳である半導体集積回路は、大きさが5ミリ〜1センチ角程度のチップで、その中には電流をオン/オフするスイッチとしての、たくさんの「トランジスタ」が並んでいます。集積回路の機能の充実や性能の向上、消費電力抑制のため、微細化されたトランジスタが敷き詰められており、一番小さな部分はたったの2ナノメートルになろうとしています。このような超微細なトランジスタが、最先端スマホの集積回路には100億個以上搭載されています。
データサイエンスを駆使した回路設計
今主流のトランジスタは単結晶シリコン上に作られますが、シリコン原子の大きさ自体が0.2ナノメートル程度であるため、2ナノメートルだと原子が1個外れただけでもその動きは10分の1以上変わってしまうことになります。微細化により、トランジスタの動作の「ばらつき」の影響が無視できなくなります。一方、集積回路は電源から電荷を移動させて1/0の数値を表現し、計算していきます。スマホやタブレットの電池を長持ちさせるために内部の動作電圧を低くする傾向にありますが、低電圧化もトランジスタの動作のばらつきを生む原因のひとつです。
そこで、このようなばらつき要因があっても集積回路が間違いなく動くように、データサイエンスを駆使してトランジスタなどの配置やつなぎ方などを最適化する回路設計の研究が行われています。
過酷な条件でも正しく動く集積回路
「IoT(モノのインターネット)」のための集積回路は、いろいろな場所での使用が想定されます。電池の交換や充電ができない場合もあり、太陽光や振動、温度差発電などの環境エネルギーの利用が望まれます。また低温下でもトランジスタの動作は変化しますが、屋外での使用では温度の変動にも耐え得るものでなければなりません。自然の過酷な状況下でも間違いなく動くように最適化された集積回路を設計し、気象や地象の観測、生態系の監視などの「IoTネットワーク」の構築につなげることが目標とされています。
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