人工知能が人間のように言葉を操れる日は来るのか?
人間にできて人工知能にはできないこと
人工知能(AI)の急速な進化についてのニュースが最近よく話題に上ります。囲碁や将棋でコンピュータがプロ棋士に圧勝したという話を聞いて、人工知能はすでに人間をすっかり超えてしまった、と考える人も多いでしょう。しかし、人間にできるのに人工知能にはできないことは、まだまだたくさん存在します。そのうちの1つが「言葉の習得」です。
人間の言葉の覚え方は謎だらけ
言葉とは、音声、語彙、文法、文脈・意味などの要素によって成り立っています。このうち、最初の3つの要素に関しては現在の人工知能でもかなりのレベルまで扱えるようになっていますが、文脈・意味の理解に関しては、まだうまく対応できていないのが現状です。
一方、人間はこれらの4要素を子どもの頃からどうやって習得しているのかというと、実はその習得のメカニズム自体が、まだ研究途上にあるのです。例えば、従来、人間は子どもの頃に「語彙爆発」と呼ばれるほど急激に言葉を習得する時期があると考えられてきました。しかし詳しく調査してみると、実は人間が語彙を覚える速度自体はほぼ一定であり、途中に習得の休止期間が生じる関係で、爆発的に語彙が増えているように見えていた、という事実が明らかになりました。また、語彙の習得速度に個人差があるのは、最初に覚える20語程度の語彙品詞のうち、名詞の割合が多い人は習得が早めで、挨拶や会話などに用いる社会語の割合の多い人はゆっくりめだったという調査結果も出ています。
人工知能の進化に必要なこととは
人工知能の研究とは、「人間ができて機械ができないことについての研究」と考えることができます。しかし、先に挙げた言葉の事例のように、そもそも人間が持つ能力について、それをどのようにして習得して用いているか、仕組みすらよくわかっていないことは、山のようにあります。そうした謎が1つずつ解明され、技術革新がなされていけば、人工知能はより人間に近い存在になっていくでしょう。
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電気通信大学 情報理工学域 I類(情報系) コンピュータサイエンスプログラム 教授 南 泰浩 先生
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