デジタルデータのやり取りの裏で活躍する数学的理論って?

デジタルデータのやり取りの裏で活躍する数学的理論って?

コンピュータが使う言葉は、日本語じゃない

あなたが友人とLINEやメールで交わす日本語は、コンピュータの中で一度、「0」と「1」の数字から成る「デジタルデータ」に変換されます。それが友人のスマートフォンやパソコンの画面上に、再び日本語となって表示されるのです。コンピュータ内ではよりスムーズで効率よくやりとりできるよう、デジタルデータの圧縮が行われています。それによって大量のデータの保存や通信が可能になっています。

デジタルデータを圧縮するとは?

例えば、かけっこで8人が走り、あなたは友人に、誰が1番になったか結果を伝えます。Aさんは優勝候補、Hさんは一番足が遅いです。このときAさんは000、Bさんは001、Cさんは010、Hさんは111番というふうに番号を割り振るとします。3桁の数字は情報学で「3ビット」といい、Aさんが勝ったら、あなたは友人に000という3ビットのメッセージを送ればいいということになります。
これでもいいのですが、例えばAさんの勝率が高いなら、より短い番号で「0」とし、反対に、残念ながら勝つ見込みの少ないHさんは「111111」と、長い番号を割り振ります。つまり、起こりやすい事象にはより短い記述で、起こりにくい事象は多少長い記述でもいい、これが「データを圧縮する」という考え方です。これでやりとりが頻繁な事象をより効率的に扱うことができます。

応用が広がり続ける「情報理論」

例えば「100」というデジタルデータが「101」となることを、「雑音が入る」といいます。そして実は誤った情報が相手に伝わる前に裏で数学的理論を用いて元に戻し、正しい情報を伝えています。数学的理論で復元できれば、時間やお金をかけて雑音をなくす装置を開発するより、資源もコストも抑えられます。それが情報理論の中の符号理論という学問です。
さらに数学的理論を使って情報を秘匿する情報セキュリティ分野をはじめ、AI(人工知能)や機械学習の分野にも情報学の数学的な基礎理論である情報理論の考え方が用いられています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

群馬大学 情報学部  准教授 齋藤 翔太 先生

群馬大学 情報学部 准教授 齋藤 翔太 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

情報学、通信工学、データ科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

情報理論は、理論と実装の垣根が低い学問です。ですから発見がすぐに実用化しやすく、反対に実用面での知見が、理論へ影響を及ぼしやすいという、互いに影響し合いながら進化するダイナミックな動きが実感できるでしょう。
もし数学が得意なら、数式を用いた理論の研究ができますし、数式を展開するよりプログラムに興味があるなら、実装の分野で研究、活躍できます。情報理論は、数式やプログラムが好きなあなたにぜひ一度、見て触れてもらいたい学問です。

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群馬大学は北関東を代表する総合大学として、優れた人材を育成し、学問の研究と応用、福祉への貢献など、社会的使命を果たすことを特色としています。「社会のニーズに配慮しつつ細分化から総合化へ」という理念を研究面、及び教育面に具体的に実現させ、「研究活動面における社会との連携及び協力」に高く評価される形となって生かされています。