「触覚」で感動することはできるか~触覚と心の動き~
高い可能性を秘めた触覚
あなたは、映画などの映像を見て涙を流したり、コンサート会場で音楽を聴いて心を動かされたりした経験はありますか。たとえ「ない」という人でも、視覚や聴覚による感動を想像することはできるでしょう。では、触覚で感動した経験はありますか? 何かを触って感動、となるとなかなか難しいかもしれません。触覚は研究という面でも、視覚や聴覚に比べるとまだ未解明の部分が多いのが実情です。しかし人間が持つ触覚は、視覚や聴覚に次ぐ感覚を持っていると言われており、解明が進めば、世界を揺るがすような革新的なことが起こるかもしれません。
鳥肌を立たせると驚きが増幅する
触覚の研究は、かつてはロボットの遠隔操縦や視覚障がい者用のための情報呈示の研究という意味合いが強いものでしたが、最近では健常者が日常的に使う応用の研究も行われています。そのひとつが感情を操作する効果です。人間は、驚いたり怖いものを見たりすると鳥肌が立ちます。実際、驚いている状態の被験者の腕に弱い電圧をかけて人工的に鳥肌を立たせると、驚きが増幅することがわかっています。
感情が先か? 涙が先か?
19世紀末、ウィリアム・ジェームズとカール・ランゲという心理学者が提唱した「ジェームズ・ランゲ説」に、「悲しいから泣くのではない、泣くから悲しいのだ」という有名なフレーズがあります。彼らによると、涙という生理反応が生じた後、その反応に対する一種の解釈として悲しくなるというのです。ジェームズ・ランゲ説が感情のすべてを説明できるわけではありませんが、触覚によって生理反応を演出することで、心の動きをある程度操作できることはわかっています。
こうした触覚と心の動きを研究するには、高性能な触覚ディスプレイなどが必要です。ただし、完全といえるものは開発できていません。それだけ、触覚研究は難しいものですが、挑戦し甲斐がある分野でもあるのです。
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電気通信大学 情報理工学域 I類(情報系) メディア情報学プログラム 教授 梶本 裕之 先生
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