量子コンピュータでも解読が難しい次世代の暗号とは?
量子コンピュータで現行の暗号技術が無力化する?
今日の情報セキュリティの分野における暗号化の技術には「大きな数の素因数分解はコンピュータを使っても計算が難しい」という数学的な特性が利用されています。しかし、研究者の間では、並列処理による高速演算が可能な次世代のコンピュータ「量子コンピュータ」が実現すれば、大きな数の素因数分解の計算も簡単にできるようになり、現行の暗号が無力化してしまう可能性が指摘されています。そのため、現在、量子コンピュータでも解読困難な新しい暗号の開発が世界中で進められています。
量子コンピュータに対抗できる暗号を作るには
では、量子コンピュータに対抗できる暗号とは、どのようなものでしょうか? 現行の素因数分解に基づく暗号のように、数学を応用する暗号方式であれば、ベースとなっている数学の計算難易度が暗号の安全性に直結します。ですから逆に、量子コンピュータでも計算が難しいと思われるものをベースにすれば、それだけ解読困難な暗号ができるというわけです。
「組合せ問題」や「連立方程式」を暗号に
量子コンピュータへの対抗策として注目されているのが、「ナップサック問題」という組合せパズルを応用した暗号です。これは例えば「さまざまな大きさのピースを箱の中に隙間なく詰めるにはどうすればよいか」といった問題に基づく暗号であり、すべてのピースの組み合わせを試さなければならないため、計算が複雑になります。また、連立方程式を応用した暗号も量子コンピュータへの耐性が期待されています。コンピュータを使った連立方程式の計算は、1次式であればどれだけ変数を増やして複雑にしても簡単に計算できますが、次数を2次、3次と増やすと計算が難しくなります。
これらの数学の問題は、効率的なアルゴリズム(コンピュータで計算を行う際の手順)が今のところ知られていないため、量子コンピュータを用いても解読が難しい次世代の暗号への応用研究が進められています。
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東京都立大学 理学部 数理科学科 教授 内山 成憲 先生
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